2025年12月10日(水)

インドから見た世界のリアル

2025年12月10日

 プーチン大統領が訪印した。すばらしく豪華な式典、モディ首相とプーチン大統領の親密ぶりが示された。しかし、それ以外、ほとんど何も起きなかった。

ロシアのプーチン大統領の訪印は何を意味したのか(ロイター/アフロ)

 インドとロシアとの間では、武器や原油の取引が起きるのではないかと注目されてきた。しかし、どちらも起きなかったのである。

 あったのは、貿易関連の協定が少しで、特に北極海の開発やユーラシア大陸の貿易の促進に関するものだ。なぜ注目された武器や原油の取引には、至らなかったのだろうか。

ロシアの限界

 今回、武器や原油の取引に至らなかったのは、インドに対するロシアの影響力が落ちていることをはっきり見せつけたと言える。

 インドは、ロシア製の武器を購入したいと考えていた。実際、今年5月に起きたパキスタンに対するインドの対テロ軍事作戦では、ロシア製S-400地対空ミサイルが大活躍した。

 パキスタンは奥行きが狭い国である。もしインドがS-400地対空ミサイルのような射程の長い地対空ミサイルを使用すると、パキスタン上空の主要な部分が射程内に入ってしまう。

 結果、前線で戦う戦闘機だけでなく、後方でパキスタン軍の戦闘機を支援していた早期警戒管制機(高性能レーダーで、戦闘機の作戦を指揮管制する航空機)までがS-400地対空ミサイルに撃墜されてしまった。インドは、S-400地対空ミサイルは、対パキスタン戦に適合した武器として、より多く購入したくなるものだったのである。

 しかし、実際には、S-400地対空ミサイルは、納入が遅れている。5個大隊分の内、2個大隊分は、まだインドに到着していない。2022年以降、ロシアは、毎年、「今年中に納入する」約束はしているが、25年の終わりになっても、また「来年と再来年には納入する」と約束するだけで、納入の目途が立っていない。

 ロシアは、ウクライナで武器を使ってしまっており、インドに輸出する分はないものと思われる。だからインドとしては、納入されない武器を購入する約束だけするわけにはいかないのである。


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