2025年12月5日(金)

インドから見た世界のリアル

2025年11月7日

 10月半ば、トランプ大統領の発言が注目を集めた。トランプ大統領によると、インドのモディ首相が「ロシア産原油購入を停止すると約束した」とのことだった。ところが、その直後、インド外務省の説明では、「そのような話には関知していない」とのことだった。何が起きているのだろうか。

トランプ大統領(右)とモディ首相の発言にはそれぞれ政治的な思惑が込められている(AP/アフロ

 このような発言になるのは、トランプ大統領とモディ首相にそれぞれ、政治的な思惑があるからだ。そこで、本稿では、それぞれの政治的な思惑について分析するとともに、そもそもインドはロシアからの原油輸入を停止することが可能なのか、検証し、米印関係の今後の方向性について分析することにした。

トランプ大統領の政治的思惑

 まず、トランプ大統領にとって、なぜインドのモディ首相がロシア産原油購入を停止すると約束したことが、それほど大事なのだろうか。トランプ政権に近い地政学者の世界情勢分析を聞くと、それが類推できる。

 そもそも英米の地政学においては、世界を大陸勢力(中国とロシア)と、海洋勢力(アメリカ、イギリス、日本など)に分け、海洋勢力は大陸勢力を分断して対抗する、といった議論が続いてきた。つまり、中国とロシアの分断は、常に目標であった。

 ところが、ロシアのウクライナ侵略の結果、ロシアは多くの貿易相手を失い、中国との貿易に強く依存するようになった。結果、中露は分断するのではなく、より強固に結びついてしまった。

 トランプ政権は、この状況を変えようと試みているものと思われる。アメリカにとって脅威となるのは、経済的に強力で、その経済力に支えられた軍事力を保有しつつある中国であり、経済力が弱いロシアではない。

 だから、アメリカとしては、中露を分断し、ロシアと組んで中国に対抗したい。そのためには、ロシアのウクライナ侵略を停戦に持ち込み、ロシアと交渉したい、ということになる。


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