今、インドの姿勢に注目が集まっている。インドのモディ首相が上海協力機構に出席し、中国の習近平主席、ロシアのプーチン大統領と談笑する姿が、世界に向けて放送されたからだ。
インドメディアも上海協力機構を大きく取り上げ、筆者にも連日解説の依頼がきた。その際の質問は、「中国は信用できるのか」という問いである。
これまで、インドメディアは、中国に対して非常に厳しく批判してきた。だから、中国が信用できないのは当たり前で、「中国は信用できるのか」という問いなどしなかった。
ところが、今回は、そのような質問を頻繁にして、コメンテーターに解説を求めていた。まるで、中国と手を組むことを考えているが、本当に大丈夫なのか、といったニュアンスを含む雰囲気であった。
いったい何が起きたのか。インド太平洋、日米豪印4カ国の枠組み「QUAD(クアッド)」といった構想を進め、インドを味方に引き入れて中国に対抗する戦略を推進してきた日本にとっては心配な情勢である。そこで、本稿は問う、日本にとって「インドは信用できるのか」。
日本への強い配慮
インドは信用できるのか。その質問を考える際に、忘れてはいけないのは、そもそもインド側は日本との関係をどう考えているのか、である。
今回のモディ首相の訪問では、日程に隠されたメッセージがあった。モディ首相は、中国に行く前に日本に立ち寄ったこと。そして、中国が日本に対する「勝利」を記念するために挙行する大規模軍事パレードの前日に、インドに帰っていること、である。モディ首相としては、日本に最大限配慮した日程になっているのだ。
さらに、興味深いことは、日印首脳会談の共同声明では、「東シナ海および南シナ海における状況への深刻な懸念」を表明した。「中国」と名指しはしていないものの、中国を訪問する直前でも、この文言が入ったことは、インドとして明確な立場を示したものといえる。
実際にインドは、フィリピンに射程290キロメートル(㎞)超音速ミサイル「ブラモス」を輸出しており、さらに今年は、インド艦隊がフィリピン海軍と南シナ海で共同演習も行っている。南シナ海の立場も、中国の領有権の主張に疑念を呈した2016年の国際法廷の立場を支持している。
このようなインドの立場は、例え中国を訪問する直前でも、インドはこのような中国の行動に対抗する立場は変更しなかった。それを日本で証明していったのである。
