2025年12月5日(金)

インドから見た世界のリアル

2025年8月28日

 インドのモディ首相が8月29~30日に訪日する。日本では、筆者も含め、多くの専門家が、中国に対抗するためのインドの重要性に着目してきた。それ自体は事実なのだが、それ以外の側面、特に、インドが大国として台頭していることが日印関係にどのような可能性をもたらすかについての分析もまた必要である。

訪日するインドのモディ首相と〝今〟連携を強める必要がある(Anna Moneymaker / gettyimages)

 本稿では、インドの大国化を概観し、それがどのような国益を日本にもたらす可能性があるのか、そして今回の訪日にどのような期待があるのか、分析することにした。

インド大国化の意味

 インドの大国化は、どのような潜在性を持っているのだろうか。そもそも、インドには地理的な潜在性がある。それは、過去のインドの王朝を見ると、よくわかる。

 インドは現在を除いて、過去3回しか統一されたことがないが、その3つ、マウリヤ朝、ムガル帝国、英領インドの時で支配地域がほぼ同じである。インドは、ユーラシア大陸とヒマラヤ山脈のような高い山脈で隔てられており、その山脈を超えて北に支配地域を拡大するのは難しい地形がある。実際、軍事作戦を考えると、攻め上がるよりも、攻め下る方が楽だし、重量のある補給品をもって上るより、下る方が楽だ。これは軍事作戦だけではなく、貿易の場合も同じで、運搬のしやすさは貿易の拡大につながる。

 一方で、インドの王朝は海洋に進出してきた歴史がある。インド南部に成立したチョーラ朝は、強力な海軍を有して遠征し、現在のモルディブやスリランカ、バングラデシュなどを従えただけでなく、東南アジアのマレーシア、シンガポール、インドネシアにあたる地域も影響下においた。そして、東南アジアを経由して中国と貿易して利益を上げていたといわれている。

 また、戦国時代の日本に来たフランシスコ・ザビエルも、インドのゴアを拠点として来た。インドからインド洋を東に行けば、東南アジアや日本、西に行けば中東やアフリカに到達する。そのため、インドは地理的に海洋帝国、海洋貿易の拠点としての潜在性を有していることがわかる。


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