インドは、マラッカ海峡の出入り口にあたるアンダマン・ニコバル諸島の軍事基地の強化を進めており、マダガスカルやモーリシャスなどにも拠点を持つ。さらに、イエメンのフーシ派対策でも、大規模に海軍艦艇を派遣してシーレーン防衛にあたっているため、インド洋での大きな存在感を示しつつある。
日本の中東からの石油を運搬するルートだけでなく、貿易の拡大などでも活用されるインド洋全域において、日印の防衛当局同士の協力は、その重要性を増していくだろう。実際、アンダマン・ニコバル諸島の軍事基地が必要とするインフラでは、光ファイバー網や発電所の整備などで、日印が協力している。シーレーンを脅かす潜水艦の探知などで、日印双方にメリットがあるだろう。
今回のモディ訪日が大切な2つの理由
このように考えると、インドが大国化する中で、日印の連携には大きなメリットがある。そして、その連携は、今、進めるべきタイミングであり、今回のモディ首相の訪日は注目される。
なぜ今回がタイミングとして優れているかというと、2つの理由がある。まず、現在、インドの政権が安定しているからだ。
モディ政権は、14年に成立して以後、選挙ごとに議席数には変化があるが、現在まで、安定して続いてきている。これは、インドの歴史を見ると、実は、珍しい。
過去、インドの政権は、多種多様な政党による連立政権の時期が長かった。その連立政権には、右派も左派も含まれ、どのような政策を採用しても、連立政権のどれかの政党が反対して、連立政権離脱をほのめかし、物事が動かなかった。しかし、今は違う。
日本とインドが合意すれば、政権が安定している点で、実際に実現する。だから、何か合意を目指すことがあれば、できるだけ、モディ政権の時に合意しておいた方がいい。
もう一つは、現在のモディ政権が技術政策を重視していることと関係がある。特にAI、量子コンピューター、半導体、宇宙、スタートアップで行われる新しいものを重視しているようである。
現時点では、日本の技術的蓄積は、世界トップレベルで、そのため、技術を外交カードとして、インドと取引できることは、日本にとって有利な状態だ。そのため、日本に有利なカードがあるうちに、いい条件で、日印の合意を取り付けておくのだとしたら、早い方がいいのである。
インドの大国化は、世界に大きな影響をもたらす可能性があり、日本にとっても国益につながりえるものだ。だから、かつて安倍晋三元首相がインド国会で演説したとおり「強いインドは日本の利益であり、強い日本はインドの利益」なのである。


