2025年12月5日(金)

インドから見た世界のリアル

2025年8月28日

 インドは、マラッカ海峡の出入り口にあたるアンダマン・ニコバル諸島の軍事基地の強化を進めており、マダガスカルやモーリシャスなどにも拠点を持つ。さらに、イエメンのフーシ派対策でも、大規模に海軍艦艇を派遣してシーレーン防衛にあたっているため、インド洋での大きな存在感を示しつつある。

 日本の中東からの石油を運搬するルートだけでなく、貿易の拡大などでも活用されるインド洋全域において、日印の防衛当局同士の協力は、その重要性を増していくだろう。実際、アンダマン・ニコバル諸島の軍事基地が必要とするインフラでは、光ファイバー網や発電所の整備などで、日印が協力している。シーレーンを脅かす潜水艦の探知などで、日印双方にメリットがあるだろう。

今回のモディ訪日が大切な2つの理由

 このように考えると、インドが大国化する中で、日印の連携には大きなメリットがある。そして、その連携は、今、進めるべきタイミングであり、今回のモディ首相の訪日は注目される。

日本における対中戦略から見たインドの重要性はこの書籍でも指摘されている

 なぜ今回がタイミングとして優れているかというと、2つの理由がある。まず、現在、インドの政権が安定しているからだ。

 モディ政権は、14年に成立して以後、選挙ごとに議席数には変化があるが、現在まで、安定して続いてきている。これは、インドの歴史を見ると、実は、珍しい。

 過去、インドの政権は、多種多様な政党による連立政権の時期が長かった。その連立政権には、右派も左派も含まれ、どのような政策を採用しても、連立政権のどれかの政党が反対して、連立政権離脱をほのめかし、物事が動かなかった。しかし、今は違う。

 日本とインドが合意すれば、政権が安定している点で、実際に実現する。だから、何か合意を目指すことがあれば、できるだけ、モディ政権の時に合意しておいた方がいい。

 もう一つは、現在のモディ政権が技術政策を重視していることと関係がある。特にAI、量子コンピューター、半導体、宇宙、スタートアップで行われる新しいものを重視しているようである。

 現時点では、日本の技術的蓄積は、世界トップレベルで、そのため、技術を外交カードとして、インドと取引できることは、日本にとって有利な状態だ。そのため、日本に有利なカードがあるうちに、いい条件で、日印の合意を取り付けておくのだとしたら、早い方がいいのである。

 インドの大国化は、世界に大きな影響をもたらす可能性があり、日本にとっても国益につながりえるものだ。だから、かつて安倍晋三元首相がインド国会で演説したとおり「強いインドは日本の利益であり、強い日本はインドの利益」なのである。

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