2025年12月5日(金)

インドから見た世界のリアル

2025年8月28日

 そのインドが、今、経済成長をしている。現在のモディ政権が成立した2014年、インドの国内総生産(GDP)は世界第11位であったが、現在は4位になったものとみられ、30年までに、アメリカと中国に次ぐ、世界第3位に成長するものとみられている。

 軍事的に見ても、例えばストックホルム国際紛争研究所による軍事支出のデータでは、24年にアメリカ、中国、ロシア、ドイツに次ぐ世界第5位になっている(日本は第10位)。武器の開発・生産能力も高め、戦車、空母や原子力潜水艦を含む艦艇、戦闘機、戦闘ヘリコプター、ドローン、大陸間弾道ミサイルなど、高い技術を要する各種の武器の国産開発・生産が、徐々に可能になりつつある。

日印協力を強化する経済・防衛的メリット

 日本の政策を考える際も、将来インドが大きな力を持ってくることを想定して、関係構築を考えるべできある。例えば、インドがもつ地理的潜在性からは、インドを拠点として、東南アジアから中東、アフリカを一体となって考える経済圏構想などが考えられる。

 日本は、07年のインド国会において行われた安倍晋三首相の演説「二つの海の交わり」以降、「インド太平洋」として、インド洋全域を含む構想を、太平洋と連結しようとしてきたが、25年8月に横浜で開かれたアフリカ開発会議(TICAD)において、「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」を発表した。その地理的中心となるのがインドである。

 インドの方でも、大きな構想が進んでいる。インドは90年代初めから東アジアや東南アジア諸国を視野に入れた「ルック・イースト」構想を進めていたが、モディ政権の下で「アクト・イースト」構想として、インドと東南アジア、そして日本との連携を進めてきた。その後、23年の主要20カ国・地域(G20)首脳会議の際に、「インド・中東・ヨーロッパ経済回廊(IMEC)」を進め始めている。

 これは、インドから、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビア、イスラエルを通じてヨーロッパまでつなぐもので、アメリカと協力した構想である。日印間では、日印アフリカ対話も繰り返し開いており、アフリカ対策での連携も進めており、「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」でも日印の連携が想定される。

 例えば日本からインドに投資し、インドで生産拠点をつくる。一方で、日印で協力して、中東やアフリカでインフラ建設などを通じて市場を開拓し、インドで日印が共同生産したものを売る、といった大きな構想が可能になる。

 日印間では、防衛分野でも協力が進んでいる。日印の防衛省間では、防衛情報や防衛技術の共有に関する協定はすでに結ばれており、それらに基づいて、すでに無人車両の開発プロジェクトが完了している。さらに24年、海軍艦艇のアンテナ、ユニコーンの共同開発・生産で合意した。

 海軍艦艇のアンテナというと、一見すると地味なものにみえるが、軍の通信は秘匿する必要があるなど機微なものなので、そのアンテナを日印で共通のものにすることで、作戦面での連携は、大幅に向上する。海洋安全保障での連携が進んでいる証拠である。これ以外にも、日英伊3カ国で共同開発する戦闘機の計画に、インドが何らかの形で参加する可能性も出ている。


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