中東からパキスタンを通って新疆ウイグル自治区に入るルート、中東からミャンマーを通じて雲南省に入るルート、中国からマレー半島を横断してカンボジア、ラオス、メコン川を北上して中国に運ぶルートなどである。中国のインフラプロジェクトは、これらの代替ルートに沿って建設されている。そして、これらのインフラ建設プロジェクトを守るために、中国軍の進出も進みつつある。
このような中国によるインド洋におけるインフラ建設プロジェクトは、その位置から、インドを包囲する位置に建設されつつある。そして、それらのインフラを守るために派遣されてくる中国軍もまた、インドを包囲する位置に配置されることになる。インドとしては、安全保障上、許されないことになる。
このような状況から見ると、インドと中国は、まさに時限爆弾を抱えたままの一時的友好状態にあり、長期的に友好関係が続くとは思えない。
米印関係にとっての日本
ではなぜ、今回、上海協力機構において、中国、ロシアとインドが友好的に見える演出をしたのだろうか。その背景には、インドとアメリカの間で感情的にこじれた関係が生まれていることがあるものと思われる。
ロシアのウクライナ侵略以降、ロシアと縁を切ることを求めるアメリカのバイデン政権に対し、インドは反発を強めていた。インドは、ロシアとウクライナの停戦交渉を求めるトランプ政権に期待してきたが、停戦交渉は難航し、トランプ大統領もまた、インドに対し、ロシアから原油や武器を買わないよう求め、関税50%をかけてきた。
そこに、テロ事件が起き、インドがテロを支援しているパキスタンを空爆し、印パ衝突が起きた。アメリカは、印パの停戦にトランプ大統領の仲介が貢献したという立場だが、インドは伝統的に印パ間における外国による仲介を認めておらず、トランプ大統領の貢献を認めなかった。一方、パキスタンは、トランプ大統領へのノーベル平和賞推薦を強く推進した。米印関係はますますこじれた。
さらに、主要7カ国(G7)首脳会談でこじれた。モディ首相はG7のゲストとして、2日目から参加であったが、イスラエルのイランの核施設空爆を念頭に、急遽、トランプ大統領は、G7を1日目だけで帰国してしまい、米印首脳会談はキャンセルになった。ところが、帰国先のワシントンではパキスタンの軍のトップが待っており、トランプ大統領と会談した。
パキスタンは歴史の半分が軍政で、民政の時も軍事の支持が欠かせないから、パキスタン軍のトップは事実上、国のトップである。つまり、トランプ大統領は、インドのトップとの会談をキャンセルして、パキスタンのトップと会談したことになってしまった。

