2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月18日

 2025年8月25日付フォーリン・ポリシー誌は、米国はグローバル・サウスに対して米国か中国かの二者選択を迫っていると指摘するトルコ出身の有識者Galip Dalayとインドネシアのオピニオン・リーダーDino Patti Djalalによる論説を掲載している。

(dikobraziy/gettyimages・ロイター/アフロ)

 中国が世界への関与を強める中、米国は中国を戦略的な競争相手と見ている。トランプ大統領は、最近、「BRICS による反米政治に与する」国に対しては、追加的な関税を課すと警告を発した。

 一方、中国の影響を抑えるために、西側以外の国をいじめる行動は、かえって逆効果となる可能性が強い。むしろ、トランプの予測不可能性やルールと規範の軽視、ソフトパワーの減退から、中国の影響力が拡大し、グローバル・サウスを非西側ないし反西側のブロックとして再定義する試みを助けることになる。

 グローバル・サウスの国の多くは状況受け入れ型の国が多く、中国はどの大国よりも多くを提供する国である。これは、特に、インフラが未整備な東南アジアで当てはまる。

 中国が「一帯一路」で供与している規模は、欧州の「グローバル・ゲートウェー」、米国の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」、ロシアの「ユーラシア経済同盟」とは比べものにならない。中国は、受け入れ国の状況に適用する敏捷さを示している。

 グローバル・サウスの多くの国は、中国を途上国の仲間と見ている。米国は中国の台頭を脅威と捉えているが、途上国の多くにとっては、その成功から刺激を受け、見習うべき事例である。

 一方、注意を要するのは、中国がグローバル・サウスを非西側のブロックとしようとしている点である。中国とグローバル・サウスの立場が正反対となる状況も多い。

 その事例として、途上国に対する最大の二国間の貸し手として、中国は、債務処理には慎重な姿勢である。重要なことは、グローバル・サウスは、中国中心の世界秩序が現行の世界秩序に取って代わる事態を望んでいないという点である。


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