2025年11月12日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月18日

 そうなれば、万事につけて中国の意向を伺う必要が生じる事態となり、自国の行動が制約され、自国が自らの影響力を発揮していくことが困難になる。内政にも干渉されるかもしれない。

日本としてなすべきこと

 この論説には、中国の影響力拡大によるグローバルなレベルでの「多極」や「複数の秩序」が、アジアにおける「中国中心の一極秩序」に帰結することへの警戒感が繰り返し示されている。

 そうした問題意識を踏まえれば、日本としてなすべきことは明瞭である。中国がアジアにおいて覇権国となることを阻止するためには、カウンターウェイトとなる力の実体が必要である。

 米国の地域におけるプレゼンスとコミットメントは不可欠である。日米同盟はその必要性を米国にリマインドし続ける政策対話のチャネルとしても、オペレーション面で米国の活動を支える仕組みとしても大きな重要性を持っている。日米を含む多国間の仕組みに、地域の国々、特に、グローバル・サウスの国々を巻き込んでいくことの優先度も高い。

 こうした政治・安全保障分野での取り組みと共に、経済・貿易面で、米国(関税)と中国(供給過剰、経済的威圧)の攪乱的行動に対応して、自由で開かれた貿易体制を守っていくこと、地球規模課題で米国の後退による空隙を埋めていくことも大事である。

 この論説には、グローバル・サウスにおける中国に対する警戒感が強く表現されているが、中国がグローバル・サウスにとって強大吸引力を持っていることも、第二期トランプ政権の行動がそれを後押しする結果となっていることも事実である。インドのモディ首相が 7年振りに訪中し、上海協力機構の首脳会議に出席したことはそうした力学の強さを物語っていると考えられる。それだけに、日本としても、上述の取り組みを進めるに当たっては、よほど腰を据えて臨む必要があろう。

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