米国は電気を贅沢に使っている国だ。都市部では治安の問題もあるのか、人がいなくても照明を消さないビルも多くある。電気料金が安い州が多いためか省エネ意識も高いとは言えない。
もちろん日本より電気料金が高い州もある。ハワイ州、カリフォルニア州などの電気料金は、日本より高い。1キロワット時(kWh)当たりの今年5月の平均電気料金はハワイ州35.34セント(53円)、カリフォルニア州26.03セント(39円)だ。日本の5月の平均電気料金23.5円をかなり上回る。
全米平均は13.17セント(20円)。データセンターの立地も多いノースダコタ州の料金は全米一安い8.34セント(12.5円)だ。
ノースダコタ州の最大の電源は石炭火力だ。炭鉱を持ち石炭火力設備を保有する州は、設備を維持し価格競争力のある石炭で発電コストを下げている。
炭鉱を持つ地域あるいは国は、炭鉱からの競争力のある石炭を利用し低発電コストと同時に安定供給を実現している。脱炭素、脱石炭運動がこの勢いを止めると思われたこともあったが、生成AIを支えるデータセンター用の電力供給がクローズアップされるにつれ、トランプ政権の米国での石炭火力の廃止は遠のいてきた。
加えて中国、インドでの石炭火力の増設があり、石炭消費量は昨年過去最高になった。石炭消費の減少はいつ始まるのか。
石炭火力は世界最大の電源
世界を見渡すと電力供給量でもっとも多いのは石炭火力だ。発電量の35%を担う。シェアは下落傾向だが、石炭火力の発電量は増え続けている(図-1)。
中国とインドが2大石炭火力大国だ。世界1位と世界3位の発電量の国が、総発電量の6割、7割を石炭火力からの発電に依存している(図-2)。両国共に、大きな石炭資源を持つことがその理由だ。
安全保障の観点から、国内のエネルギー資源の活用は重要だ。しかも国営、地方政府の炭鉱もあり価格も安定している。両国を中心に途上国の石炭火力の発電量は増え続け、世界の石炭生産量も増え続けている。


