トランプ大統領が就任100日目を迎えるにあたり、多くの報道機関は支持率について世論調査を実施した。
これに対しトランプは、4月28日のSNSへの投稿で、ニューヨークタイムズ、ワシントンポストから共和党寄りとされるフォックスニュースの世論調査まで、全て「フェイク世論調査」と切り捨てた。レーガン以降の大統領の中で、就任初期の支持率が最低と報じられたからだろう。
このSNSを見て思い出したのは、中国の大学教授の発言だった。
シンガポール国立大学が、アジアの研究者を集めて開催した研究会で中国経済とエネルギーについて議論が及んだ時に、中国の大学から参加していた教授が、「中国政府のデータは数字が適当に作られているから議論しても意味がない」と発言した。
トランプは米国の報道機関の数字も中国政府のデータと同じように信頼に値しないと考えているようだが、調査機関は異なっても同じような数字が出ているので、報道機関が適当な数字を作っているわけではなさそうだ。トランプが就任後矢継ぎ早に打ち出した政策の中で、移民政策の賛否は拮抗しているものの、関税を含めた経済政策への有権者の評価は低い。
5月12日に米中間で関税の引き下げが合意された背景にあるのは、世論調査に現れた米国消費者の関税政策への評価とインフレ懸念だろう。トランプも、本当は世論調査の結果を受け、中国への関税の大幅引き下げに踏み切ったのではないか。
自動車関税については、部品に対する税率が一部修正されたものの、25%の上乗せ税率の適用が続いている。値上がりにより今年を通して自動車販売台数の落ち込みが予想されているが(トランプ関税で米国製自動車の”キューバ化”が進む? Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン))、3月から自動車の販売は大きく上向いた。
4月から課せられた自動車関税による値上がりが、近いうちに見込まれる中での駆け込み需要だが、需要の先食いとみられており、自動車市場の先行きは不透明だ。自動車の売れ行きが鈍ったところで、経済への影響を回避するため、また税率の修正があるのかもしれない。
先行きが見通せないためか、自動車企業の株価は低迷していたが、英国、中国と関税に関する合意が続いたことから、不安も和らぎ、株価が大きく上昇する中で多くの自動車会社の株はトランプ就任時の株価に戻している。
しかし、例外もある。テスラと中国の電気自動車(EV)メーカー比亜迪(BYD)だ。テスラの低迷は続いているが、その裏返しかBYDは利益も株価も上昇した。
政策は、エネルギー株にも影響を与えている。トランプの「掘って、掘って、掘りまくれ」の大号令にもかかわらず、石油・天然ガス、石炭関連のエネルギー企業の株価は低迷している。加えて、トランプは洋上風力発電の新設を禁止するなど再生可能エネルギー(再エネ)に厳しい姿勢を見せており、太陽光パネルなど再エネ関連株もさえない。
一部の例外はあるものの、トランプ就任後市場は揺れ動いている。国民の多数も経済の先行きに不安を感じている。中国との相互関税の見直しで不安は和らぐだろうか。