2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年5月16日

 3月末の在庫日数を見ると、日本メーカーの在庫は押しなべて減少している。ブランド別の2月末と3月末の在庫日数は表-1の通りだ。4月の販売台数も日産を除き伸びている。昨年同期比でトヨタ10.2%増、ホンダ18.1%増、日産2.1%減、スバル0.3%増、マツダ21%増だ。

 GM、フォードも販売台数を伸ばしているが、テスラは19.6%減とほぼ一人負けの状況になっている。

 大半のメーカーが駆け込み需要で潤っているが、関税による値上がりを予想した需要の先食いに過ぎない。これからの販売は自動車関税の先行き次第だ。今年の販売台数は当初見込みの1630万台から、今後の値上げにより最大70万台落ち込み1560万台との予想も出されている。

損をしたのはテスラだけ?

 米国でのEVの販売のスピードは落ちたもののシェアは少しずつ伸びていたが、ここにきてハイブリッドを除き伸びが止まってきた。昨年のハイブリッド車(HEV)のシェアは10.1%、バッテリー稼働のEV(BEV)7.8%、プラグインハイブリッド(PHEV)2.0%だったが、今年4月のシェアは、HEV12.3%(前年同月8.7%)、BEV7.4%(同7.0%)、PHEV2.0%(同2.3%)。

 全体の台数が10%増えているので、EVも販売台数は増えているが、伸びは鈍い。そんな中で、テスラの苦戦は続いている。

 米国市場に上場されている自動車株は、自動車関税の発動を受け4月上旬に大きく値を下げたが、その後部品に関する関税の修正、英国、中国との関税の合意を受け、トランプ政権発足時の株価までほぼ値を戻している。とりあえず販売は好調だし、関税の影響は和らぐと見ている投資家が多いのだろう。

  しかし、相互関税発表後の4月前半のギャラップの世論調査では、関税、インフレを心配する国民が増え、景気の先行きに関する見方が急速に悪化している。トランプ就任直前に61%だった株価上昇の予想は、29%に落ち込み、金利上昇の予想は35%から42%に上昇した。失業率も上昇するとみられ、経済成長への期待もしぼんだ(図-3)。

 トランプ政権が国民の関税に伴うインフレ懸念を打ち消すことができるかが、今後の自動車販売も左右する。

 多くの自動車会社の株価が戻す中で、政府効率化省を率いるイーロン・マスクが最高経営責任者(CEO)を務めるテスラの株価は、政権発足時の420ドルに戻ることはなく、5月12日時点で318ドルだ。

 マスクが消費者から反感を買いテスラ車の売れ行きにも影響が出たことから(「テスラ支援は形だけ?本音ではEV嫌いなトランプをイーロン・マスクが支持し続ける理由」)、4月上旬には株価は220ドルまで下がった。戻してはいるが、他のメーカーとの比較では戻りは鈍い。マスクがトランプを支援したことで昨年後半に株価が上昇したが、その値上がり分はほぼ吹き飛んだ。

 5月12日には、主力のテキサス州オースティン工場のサイバートラックとモデルY製造ラインの従業員に対し、1週間の自宅待機あるいは清掃業務への従事が指示されたと報道された。

 一方、テスラの不振を横目に、香港市場に上場されているBYDの株価は、トランプ就任時の250香港ドルから415香港ドルまで上昇した。結局、テスラが苦しみ、中国企業が漁夫の利を得たのだろうか。


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