2025年12月6日(土)

World Energy Watch

2025年8月27日

 両国の石炭消費量が落ち込む兆しは見えない。70年の脱炭素を宣言しながら石炭省を持つインドは、炭鉱の開発と石炭火力建設を続け、今後10年で倍増するとみられる電力需要を満たす路線だ。

 中国は石炭消費の削減を宣言している。いつ減るのだろうか。

増え続ける中国の石炭火力

 中国の石炭火力による発電量は増え続けている。14年から16年に石炭火力の発電量が一時的に減少しているが、これは大気汚染防止政策の影響もあったためだ。

 中国政府は、13年から17年にかけ大気汚染防止管理行動計画を策定し、微小粒子状物質PM2.5を25%削減する目標を掲げ、都市部近郊の石炭火力発電所を閉鎖した。

 PM2.5は改善したものの、電力供給に問題が生じ石炭消費の抑制を続けることはできなかった。17年には石炭火力の発電量は、行動計画前より増えてしまい、その後コロナ禍の時代も減ることはなく、10年間で石炭火力の発電量は50%近く増加した。

 石炭火力を支えるのは、世界の石炭生産量の50%強を占める中国の石炭生産量だ(図-6)。国内生産だけでは発電と鉄鋼用主体の石炭需要を賄うことができず輸入もしている。

 21年に習近平主席は、5年間石炭消費増を抑制すると宣言した。また、中国は30年に石炭消費をピークアウトし、60年に脱炭素を達成する目標を掲げている。実態は減少の道筋には程遠い。

 昨年、運転を開始した石炭火力の設備容量は3050万キロワット(kW)。23年の運開設備量4980万kWより落ち込んだ。ところが新設は勢いを増している。

 昨年建設工事を開始した石炭火力の設備容量は、9450万kW。過去10年で最高だ。建設を中断していた3基の建設も再開した。これだけで、石炭の消費量は年間2億トン以上増える。

 建設が認可された設備容量は、6670万kW。日本の電力事業用の石炭火力の設備容量は5200万kWだ。中国の石炭火力の凄まじい建設スピードは1年で日本の全設備容量を上回る。

 新設した石炭火力は数十年利用する。30年ピークアウト目標の達成は、新設設備以上の石炭火力の閉鎖を進めなければ不可能だ。比較的新しい設備を持つ中国が、閉鎖を進めるのは困難に違いない。

 中国の1人当たりの電力需要量は日本に迫っているが、輸送部門で電気自動車の導入が世界一進んでいること、国内総生産(GDP)に製造業、特に鉄鋼、セメントなどのエネルギー多消費型専業が占める比率が日本より高いことから、日本を超える可能性が高い。

 中国の風力、太陽光発電設備の導入量は圧倒的に世界一だが、データセンターなど24時間安定的な電力供給が必要な部門には、再生可能エネルギーでは不十分なので火力あるいは原子力の電気が必要だ。

 その中国に、生成AIの利用では絶対に負けるわけにいかないと米国政府は息巻いている。勝敗を左右するのは安定的な電力供給だ。


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