2025年12月6日(土)

インドから見た世界のリアル

2025年9月18日

 結果、アメリカとインドは、双方がフラストレーションをため、激しい舌戦となった。戦略的な環境、例えば中国を念頭にアメリカとインドが協力し合うべき状況などは変わっていないのに、感情的な事案が続き、結果として非常に関係が悪化している状況にある。このような状況において、インドは、中国やロシアと仲良くしているようにみせて、アメリカへの反発を表現しようとしたのである。

重要性を増す日本の役割

 つまり、インドとアメリカの関係がインドと中国、ロシアとの接近を演出することにつながったが、それは、戦略的な環境が長期的に変わったのではなく、一時的な感情が盛り上がったことによるものといえる。

 ただ、このような感情的対立は、あまり長期に続くと、一時的とは呼べなくなる可能性があるから、甘く見ることはできない。感情が収まった時に、すぐ、アメリカとインドが仲直りできる環境を整えておく必要がある。

 その役割は、おそらく、日本が担うべきものになる。もともと、インド太平洋も、QUADも、日本の安倍晋三元首相が推進した構想だ。

 これらの構想は、日本が推進したからこそ各国が受け入れたといわれている。その理由は、これらの構想がインドを仲間に入れて中国に対抗するもので、インドを説得できなければうまくいかないからだ。

 過去の歴史的経緯から、アメリカとインドは長期安定的な関係を築けておらず、アメリカがインドを説得しようとしても難しい。しかし日本は、アメリカからもインドからも信頼されてきた。特に安倍元首相は、トランプ大統領からも、モディ首相からも信頼されており、結果、インド太平洋、QUADとも、日本だけでなく、アメリカにとっても、インドにとっても戦略となっていった。

 今、アメリカとインドは、その関係の不安定性を再び露呈している。もう安倍元首相はいないが、日本が両国の「愚痴」を聞きながら、日米、日印関係を安定的に発展させていくことは、米印関係を支える礎になるだろう。

 まさに、日本の力で、インドを信用できるパートナーにする。その努力が求められるのである。

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