ホワイトハウスで10月17日、米国のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談が行われた。その一週間ほど前、トランプ大統領がトマホーク巡航ミサイルをウクライナへ供与する可能性をロシアに伝えるかもしれないと述べたことがその発端とみられている。
これまでウクライナに供与されてきたミサイルではロシアの国境深くには届かない一方で、今回供与の可能性が示唆されたトマホークの射程距離は1600キロメートルと長く、ウクライナから発射してもモスクワやロシア内陸部のエネルギー施設なども射程に入る程で、ウクライナがその供与をバイデン政権時から望んでいたものであった。
ウクライナにおける2025年の戦争による死傷率は24年に比べて3割増大していると国連が発表するなど、苦しい立場にあるゼレンスキーにとって、トマホークは喉から手が出るほど欲しい兵器であった。早速、ゼレンスキーはワシントンに飛んで17日の首脳会談となった。トランプとの首脳会談に臨んだゼレンスキーは、「あなたの助けががあれば戦争を終わらせることができると確信しています。そしてそれがとても必要なのです」と、トマホークの供与を求めた。
態度を変えたトランプ
ところが、トランプは供与の可能性について言い出したのは自分であるにも関わらず、トマホークの供与は事態をエスカレートさせるし、「多くの悪いことが」起きかねないと述べて、その供与に関して言葉を濁した。そして、米国が自国を守るためにトマホークを必要としているとまで付け足した。
首脳会談の後、ゼレンスキーは、ホワイトハウスの外で記者団の質問に応じた。会談の前後で、トマホーク供与の期待は高まったかどうか聞かれて、微笑みながら「私は現実的です」と答えるに留まったが、ウクライナ側にとって会談が期待外れであったことは明らかだった。トランプは、首脳会談後「現状で止まるべき。双方に勝利を主張させ、歴史に判断させろ」とSNSに投稿した。
なぜトランプはトマホーク供与に対する態度を後退させたのか。それには、会談前日のプーチン大統領との長時間にわたる電話会談が関わっていた。ゼレンスキー大統領との直接会談の前日、トランプ・プーチン両大統領による電話会談が行われ、その中でウクライナへのトマホーク供与も話し合われた。正確な会談の内容はわからないが、同日の記者会見においてトランプはその一部を明かしている。
