米中間選挙を1年後に控え、共和党政権内や下院共和党議員たちの間で焦りの色が見え始めている。背景に、トランプ高関税の影響による景気の下振れリスクとそれに関連した支持率の低迷がある。
打ち返そうとする“ジンクス”
下院勢力は現在、共和党が民主党をわずか5議席上回り、多数を制している。過去の通例として、中間選挙では上院はさておき、とくに下院では野党が有利とされてきただけに、僅差の議席数のまま来年選挙を迎える与党共和党は、ただでさえ試練に立たされている。
これまでの中間選挙結果がそれを裏付けている。過去5回の下院選挙を見ると、2022年(バイデン民主党政権)は、野党共和党が9議席増、18年(トランプ共和党政権)は野党民主党が41議席増、14年(オバマ民主党政権)は野党共和党13議席増、10年(オバマ政権)は野党共和党63議席増、06年(G.W.ブッシュ共和党政権)は野党民主党31議席増と、いずれも与党が平均で30議席余りを失っている。
問題は、このような野党有利のジンクスを来年中間選挙で、共和党が打ち破れるかどうかだ。
とくに上下両院の多数支配の下で高関税発動、国家予算の削減など強権をほしいままにしてきたトランプ大統領にとっても、来るべき中間選挙はことのほか重要な意味をもっており、一部米メディアによると、「大統領はとくに下院敗北の恐怖にとりつかれ、勝利に導くためにがむしゃらな行動に出始めている」(「アトランティック」誌)といわれる。
この点について、同誌はさらに次のように報じている:
「トランプは、18年中間選挙で民主党が下院を奪回した結果、同党がいかにその権限を意のままに行使したかをよく覚えている。米下院は当時、いくつかの不正容疑を理由に大統領を2度にわたり弾劾に追いやった。次回もトランプ周辺の重要人物を公聴会に次々に証人喚問し不正摘発に乗り出すほか、大統領自身に対しても民主党単独で3度目の弾劾に乗り出すシナリオが十分ありうる」
「このため、大統領はすでに共和党が支配する各州の州知事、州議会に対し、中間選挙投票で同党候補が有利になるように下院選挙区の区割りを一部塗り替える“ゲリーマンダリング”に取り組むよう執拗に指示したほか、犯罪取り締まり強化を名目として州兵を首都ワシントンなどに出動させ、景気を浮上させるために連邦準備制度理事会(FRB)に政策金利の利下げを強要するなどの動きに出ている。これら最近の大統領の一連の際立った言動は、すべて中間選挙対策の一環であることをホワイトハウス当局者たちも認めている」
「大統領自身も側近たちに『2018年の悪夢だけは繰り返したくない』『常道手段だけに頼っていれば大統領職まで脅かされる』などと語っており、来年選挙で勝利するために、人種問題や犯罪問題の深刻さを共和党有権者の意識に訴えるべく過激な行動でニュースの話題作りに乗り出している」
さらに大統領が懸念するのが、来年民主党の下院多数奪回により、自らが「一つの大きな美しい法案(ONE BIG BEAUTIFUL BILL)」と自賛して成立させた富裕層優遇の歳出法案に修正が加えられ、骨抜きにされかねない事態だ。
