共和党の支持率にも影響
トランプ氏がこうした意表をつく内外政策や行動に出始めている背景には、2期目の大統領就任以来、トランプ氏個人だけでなく、共和党に対する支持率も依然として伸び悩んでいる現状がある。
実際、今年4月段階で「CNBC」テレビが行った民主、共和両党支持率調査では、民主党が共和党を2ポイント上回っていたが、8月時点の調査ではさらに5ポイント差に開いた。同じ期間に行った「Ipsos」調査では、民主党の支持率が1ポイント差から4ポイント差に、「ウォールストリート・ジャーナル紙」調査では、1ポイント差から3ポイント差にそれぞれ拡大した。
このほか、「ギャラップ」調査でも、春の時点では両党支持率は「同率」だったが、夏には民主党が共和党に3ポイント差をつけ、「Quinnipiac」調査でも民主党の優位は春時点の1ポイント差から4ポイント差にまで開いている。
もちろん、一般世論調査の差がそのまま選挙投票結果に反映されるわけではないが、今後さらに差が拡大することになれば、選挙動向も大きく左右されかねない。
また、「CNN」テレビの分析によると、今年春時点の各州議会における特別選挙結果を見ても、共和党は民主党に平均して13ポイントもの差をつけられているという。
一方、大統領とは別に、議会共和党陣営も、全米各州の共和党幹部たちとの接触を密にするなど、中間選挙に向け、支持率挽回のために躍起となっている。
じわじわときている高関税の影響
今後、そのカギとなるのが、トランプ高関税がさまざまな経済動向に及ぼす影響だ。物価上昇については、FRBが先月の政策金利0.25利下げに続いて年内にあと2回の利下げに踏み切ると予想されることから、景気浮揚への期待がかかる。その一方で、物価上昇を招くリスクも無視できない。
さらに、すでに懸念材料がいくつか出始めている。一つは、経済界の景況感だ。企業の景況感を示すデータとして知られる「ISM景況指数」を見ると、製造業では去る5月に4カ月連続で低下した。その後も、高関税の影響がじわじわと浸透し始めるにつれて低下が続いており、好転の兆しは見えない。
労働市場を見渡しても、関税による輸入品の高騰から企業側の人事採用方針の見直しが始まっている。とくに部品、材料調達を中国、インドなどに頼っている工作メーカーや、スポーツ・アウトドア・グッズ・チェーンなどは、高関税による輸入コストの跳ね上がりで人件費の抑制を迫られている。
NHK報道によると、米国の再就職支援会社「チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス」が去る8月、発表した新規採用計画は1494人にとどまり、09年以降、最低となったという。
経済動向の中で最も注目されるのが、雇用統計だ。労働省統計局(BLS)は去る8月1日、前月に発表された5月、6月、2カ月間の雇用を25万人超も下方修正し、米メディアも「景気の減速が現実味を帯び始めた」などと報じた。
とくにBLSが公表する数値にメディアの関心が集まるのは、全米の事業所の雇用主を対象とした定期的調査データの中で大企業からの回答が大半を占めているためだ。毎月の速報値よりもその後の修正値のほうがより正確に実態を反映し、信頼性が高いといわれる。
