2025年12月6日(土)

トランプ2.0

2025年10月16日

 近年、経済問題は有権者にとっての最大関心事となってきているだけに、連邦予算編成で強大な権限を持つ下院の主導権を民主党に明け渡すことになれば、中間選挙だけでなく、28年の大統領選にも大きな影響を及ぼしかねない。

支持獲得へトランプ政権の仕掛け

 英誌「Economist」が発表した最新の米大統領支持率調査によると、大統領の仕事ぶりに対する支持率は40%にとどまっているのに対し、「不支持」は55%と、その差は15%にも開いている(10月6日付け)。

 同誌は、過去歴代大統領の場合、就任6カ月時点のこれまでの調査では、”ご祝儀相場“もあって「支持」が「不支持」を常に上回っていただけに、トランプ大統領の支持率だけが1月就任当初から一貫して「不支持」を下回っていることは異例だとしている。

 同様に、ニューヨーク・タイムズ紙が行った調査でも、「不支持」54%に対し、「支持」は43%と低迷している(10月5日付け)。

 こうしたことから、大統領は劣勢挽回めざし、支持基盤である保守系有権者層の関心を集めるための派手な言動を繰り返している。

 メディアの格好の話題となったのが、先月30日、世界各国に配備された米軍最高幹部の将軍、提督たち数百人を首都近郊の海兵隊基地に緊急招集しての大統領、国防長官による前代未聞の“説示”イベントだった。

 北大西洋条約機構(NATO)諸国はもとより、在日、在韓米軍司令官など国内外の軍トップクラス全員が一時的であれ本国に呼び戻され一同に会することは、国際危機即応態勢に支障をきたしかねないだけに、米軍史上これまで一度もなかった異例事態だった。

 しかし、ふたを開けてみると、“説示”内容は国防長官、大統領ともに緊急性とは何の関係のないとりとめもないものとなった。

 大統領は、「米国にとって最大の脅威は国内にある」などとして、米軍資源の重点を海外から国内に移し、中南米からの麻薬流入や南部の国境管理に米軍を活用していく考えを改めて力説した。

 ヘグセス長官は「戦闘に従事する兵士たちに体力テストを実施し、強靭な戦士としての精神を取り戻す」などとして、女性兵士を戦場の最前線から後退させる考えを示唆した。長官の演説も全体として緊急性や格調を欠いたものとなり、出席した将官たちは終始沈黙したまま、途中拍手などもなく、全体として盛り上がりを欠くものとなった。

 こうしたことから、米紙各紙は、今回の異常ともいえる“緊急招集”の意図について、有権者向けに愛国心の高揚を図り、来年中間選挙につなげたい思惑があった、との見方を伝えている。

 また、大統領は先月、イスラエルのネタニヤフ首相をホワイトハウスに向かい入れ、ガザ紛争決着をめざす「包括的中東和平案」を大々的に発表したが、これも短期間のうちに国際的評価を高めることでトランプ共和党政権の支持率アップにつなげることを狙ったものとの観測もある。


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