2025年12月6日(土)

キーワードから学ぶアメリカ

2025年10月9日

 アメリカでまたもや連邦政府の一時閉鎖に突入した。会計年度が10月1日に始まるため、本来ならば予算を9月末日までに成立させる必要があったが、近年では、アメリカの政治・社会の分断が鮮明になり、二大政党の勢力が拮抗して対立が激化しているため、予算がすんなり通ることはない。

アメリカでの連邦政府の一時閉鎖はいつまで続くのか(YayaErnst/gettyimages)

 暫定予算を組むことで連邦政府の一時閉鎖を防ぎ、協議を続けるのが一般的だった。だが今回は、予算を何とかして通さなければならないという熱量が、かつての連邦政府一時閉鎖危機と比べると少なかったように思われる。

 これまでにも、連邦政府の一時閉鎖は何度も起こっている。13年10月には、民主党のバラク・オバマ政権が推進しようとした医療保険制度改革にティーパーティ派が反発し、連邦政府が16日にわたり閉鎖した。第一次トランプ政権期には、トランプ大統領が米墨国境の壁建設にこだわったことなどもあり、政府閉鎖が3度発生した。そのうち18年に始まり19年1月に終わった閉鎖は36日間と、史上最長となった。

トランプ政権下の特殊性

 アメリカでは予算は法律として作成されるので、その過程で党派対立が先鋭に表れる。多くの国では、内閣(行政部)が予算案を作り、議会がそれをそのまま通すことが多い。

 議院内閣制の国では、議会の多数派(与党)が内閣を支えているため、政府が提出した予算が通らない事態はあまり想定されない。だが、アメリカでは大統領は法案提出権を持っていない。毎年予算教書を発表するものの、それがそのまま予算案として審議されることはまずない。

 具体的に述べると、連邦議会が法案として予算案を出し、上下両院で同じ法案が通過し大統領が承認すれば、予算は成立する(大統領が拒否権を行使すれば予算は成立しない)。近年では多くの法律は議会で多数の支持を得れば成立するが、予算については上院を通過するためには60票の賛成が必要である(上院の議員数は100人。上院で議事妨害(フィリバスター)を回避するためにも60票が必要である)。

 アメリカでは、連邦議会議員と大統領が異なる選挙で選ばれ、一方(議会)が他方(大統領)を選出するような関係ではない。そのため、連邦議会上下両院の多数党と大統領の所属政党が一致する統一政府と呼ばれる状態も発生するが、いずれかの部門で異なる政党が支配する分割政府と呼ばれる事態もしばしば発生する。分割政府の下では予算が通過しにくくなる可能性が高まる。

 歴史上、予算が成立せずに政府が一部閉鎖したのは大半が分割政府の時期だった。だがトランプ政権下では、第一次の際も今回も、連邦議会上下両院と大統領職の全てを共和党が支配する統一政府の状況下で、連邦政府の機能が一部停止する事態が発生した。


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