2025年12月6日(土)

キーワードから学ぶアメリカ

2025年10月9日

 民主党のビル・クリントンが大統領を務め、共和党が下院で多数を握っていた95年から96年にかけての連邦政府一時閉鎖( 一度目は11月14日から19日にかけての5日間、二度目は12月16日から1月6日にかけての21日間)の際には、ニュート・ギングリッチ下院議長が率いる共和党に一時閉鎖の責任があるとの世論が強まった。それが、96年の福祉国家再編に向けて共和党が妥協を行うとともに、96年大統領選挙でクリントンの再選を可能にした要因であるとの声も強い。

 したがって、世論が政府閉鎖の責任が共和党にあるとの判断を示している以上は、民主党の側から積極的に妥協しようとする声は出てきにくい。民主党が妥協の方向にかじを切るためには、世論の趨勢が変わることが必要であろう。

閉鎖は長期化の可能性

 これまでにも連邦政府の一時閉鎖は時折発生しており、市場もある程度織り込み済みで対応するので、その経済への影響も限定されていた。だが、もし今回、一時閉鎖の期間が史上最長を更新するようになったり、トランプ大統領が宣言したとおりに大量の政府職員を解雇するようなことになったりすると、雇用情勢が悪化しつつあるように見受けられることを考えると(もっとも、連邦政府一時閉鎖を一つの根拠として、10月3日に発表される予定だった9月の雇用統計の発表は延期された)、経済への影響も大きくなるかもしれない。

 第二次トランプ政権が発足して以降、アメリカ、そして世界はこれまで経験したことのない事態に頻繁に直面している。現在、二大政党はともに、妥協を図って政府閉鎖を解除することよりも、党派的な立場から政府閉鎖を継続させる方が合理的だと考えるようになっている。

 米国社会の分断が鮮明になり、二大政党の対立が激化していることから、二大政党の岩盤支持層は相手の政党に予算不成立の原因があると確信している。このような状況で妥協的な態度をとると、党内強硬派から反発を受けるので、安易な妥協は困難となるだろう。二大政党がどこで折り合いをつけるのかを見通すのが難しい状況は続き、連邦政府の一時閉鎖は長期化する恐れがある。

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