2025年12月5日(金)

キーワードから学ぶアメリカ

2025年9月30日

 31歳の保守派政治活動家であるチャーリー・カークが銃撃され死亡する事件が起こった。カークはリベラル派に対抗する保守派の草の根団体であるターニングポイントUSAを18歳の時に作り、高校や大学のキャンパスで討論会を催してZ世代の若者、とりわけ男性の共和党支持層を掘り起こした人物だ。

チャーリー・カーク氏の追悼式がアリゾナ州で行われた(ロイター/アフロ)

 伝統的に若者はリベラルな傾向が強く、民主党支持層が多かったが、人種や移民、ジェンダーとセクシュアリティ、銃などの文化的争点を積極的に取り上げることで支持を集めた。2024年の大統領選では最終的に、18~24歳の男性の約半数がドナルド・トランプに投票した。

 20年大統領選挙で不正があったとか、コロナ関係のワクチンに関する誤情報を積極的に流したり、「大学で左派のプロパガンダを広めて保守派の学生を差別した大学教員のリスト」なるものを作成して公開したりするなど、物議を醸す発言や行動を繰り返した人物だった。カークはトランプ大統領やJ・D・ヴァンス副大統領とも親しい関係にあった。

 政治的な人物を暴力的に排除しようとする動きは、昔から存在した。驚くべきことに、20世紀の大統領の3分の1以上が暗殺未遂事件に見舞われている。その他の政治活動家も含めれば、暴力にさらされた人の数は膨大な量になる。

 例えば、1960~70年代には、ジョン・F・ケネディ大統領、公民権運動指導者のマーティン・ルーサー・キングJr.、大統領候補のロバート・F・ケネディとジョージ・ウォレスが銃撃され、このうち生き残ったのはウォレスだけだった。80年代にもロナルド・レーガン大統領に対する暗殺未遂事件が発生したりしたのは有名だろう。

 近年では政治的暴力の頻度が大幅に増えているのではないかと指摘されている。政治的暴力に関する共通の定義が存在しないため、政治的暴力の発生件数として紹介されている数字には様々なものがある。関連の深い数値をいくつか紹介すると、プリンストン大学の分断架橋イニシアティブ(Bridging Divides Initiative)によれば、24年に地方公務員に対する脅迫や嫌がらせが600件以上発生し、22年と比較して74%増加しているとのことだ。また、メリーランド大学でテロ事件を追跡する研究を行っているマイケル・ジェンセンによると、25年には上半期に米国では政治的動機による攻撃が約150件発生しているが、これは昨年の同時期のほぼ2倍だという。


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