2025年12月5日(金)

トランプ2.0

2025年10月7日

(volkanakmese/gettyimages)

 ドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名等略)は、10月10日のノーベル平和賞発表を控え、自身が受賞するために積極的なキャンペーンを展開してきた。ではトランプは、具体的にどのようなキャンペーンを行ったのか。なぜ、彼はそこまでしてもノーベル平和賞を熱望するのか。トランプがライバル視している黒人のバラク・オバマ元大統領が、ノーベル平和賞を受賞したことだけが理由なのか。

 以下で、トランプがノーベル平和賞を熱望する、これまであまり触れなかった理由について述べてみよう。

積極的なキャンペーン

 9月23日の国連総会の演説で、トランプは「たった7カ月間で7つの戦争を終結させた」と強調し、自身がノーベル平和賞受賞に値するというメッセージをMAGA(マガ Make America Great Again:米国を再び偉大にする)たちと全世界、特に受賞者を選択するノルウェーノーベル委員会に送った。平和賞を受賞できなかった場合、同委員会の不見識に帰することができるからだ。

 米国務省によれば、7つとはカンボジアとタイ、コソボとセルビア、コンゴ民主共和国とルワンダ、パキスタンとインド、イスラエルとイラン、エジプトとエチオピア並びにアルメニアとアゼルバイジャンの戦争を指す。7つの戦争の当事国の内、インドのナレンドラ・モディ首相は、5月に発生したパキスタンとインドの衝突において米国の仲介はなかったと指摘し、トランプの主張を否定した。

 対するパキスタンは、トランプの功績を称えて平和賞に推薦することを発表した。第1次トランプ政権のときに、安倍晋三元首相もトランプを平和賞に推薦をしたことを思い起こせば、トランプのご機嫌取りには、安上りの有効な外交カードである。

 些細なことであるが、トランプは以前には、「6つの戦争を終結させた」と述べてきたが、国連総会の演説で「7カ月に7つの戦争」に変わった。「7カ月に7つの戦争」というのも、キャンペーンにおける有効なコミュニケーション戦術である。世界の人々、中でもノルウェーノーベル委員会の5人の選考委員の記憶に残すために使った「キャッチ・コピー」のようなものである。

 続けて、トランプはガザ地区における戦闘停止と人質解放を含む20項目にわたるガザ和平案を提案した。トランプがこのタイミングを選んだのも10月10日を強く意識した故であると言える。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にガザ和平案に同意させて、10日の前に発表させたのである。ガザ和平案発表のタイミングは、トランプの政治的意図に沿ったものであろう。


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