2025年12月6日(土)

トランプ2.0

2025年10月7日

隠された理由

 米国では過去に、「核なき世界」を訴えたオバマ、気候変動に警鐘を鳴らしたアル・ゴア元副大統領およびベトナム戦争終結の交渉を行ったヘンリー・キッシンジャー元国務長官など、21人がノーベル平和賞を受賞した。ちなみに、日本のノーベル平和賞受賞者は、佐藤栄作元首相と日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)ある。

 トランプは、オバマに対抗意識をむき出しにしているが、トランプが上記で述べたコミュニケーション戦術を使い、ディールをしてまでもノーベル平和賞受賞を熱望-むしろ、強要-している理由は、他にもあると思われる。トランプには同賞が必要な「隠された理由」があるのだ。

 彼は不倫口止め料を弁護士費用として計上し、帳簿を改ざんした件で、ニューヨークの陪審で有罪評決を受けた。2020年米大統領選挙では、南部ジョージア州において州務長官に圧力をかけて、票の集計の不正操作を要求し、拒まれた経過が明らかになり州法違反に問われた。

 また、2021年1月6日に発生した米連邦議会議事堂襲撃事件では、支持者を扇動したとして、米議会で弾劾訴追された。最近では、性犯罪で有罪となり収監中に独房で死亡した富豪ジェフリー・エプスタイン氏との親密な関係が取り沙汰されている。

 トランプにはあまりにも多くのダークなイメージが付きまとう。そこで、彼は権威あるノーベル平和賞受賞によって、それらを打ち消すないしは薄める効果を狙っているのだろう。

 ノーベル平和賞は、現実を必ずしも反映していないが、「清廉」や「高潔」、「名誉」といったイメージを保っているからだ。トランプは、金と地位があっても、自分が清廉や高潔に欠けていると見られていることを理解しているとみてよい。

 また、トランプは大統領職が終わると、彼に量刑が下される。その際、ノーベル平和賞受賞が自分に有利に働くと計算している節がある。要するに、トランプは「保身」のためにノーベル平和賞が必要であると考えているのだろう。

 今年のメーベル平和賞受賞は、もう決まっているかもしれない。一体誰になるのか。受賞者なしなのか。

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