2025年12月6日(土)

キーワードから学ぶアメリカ

2025年10月9日

責任を押し付け合う両党

 予算が成立していない状態では、国立公園が閉鎖されたり、パスポートの発給に関わる手続きが遅れたりするなど、様々な政府機能が滞る。社会保障や高齢者向け医療保険であるメディケアの支給は行われるが、受給資格の新規確認やカードの発行は停止される可能性が高い。

 従軍中の兵士や刑務官の仕事などは継続されるが、その給与の支払いは予算成立まで遅れることになる。一方、大統領が重要でないと判断した政府職員は、一時的に無給の休暇を命じられる。連邦政府と直接的なやり取りをしない人にとってはその影響は見えにくいかもしれないが、政府機関とやり取りをする人にとってはその影響は甚大になる。

 そのため、二大政党はその責任を互いに押し付けあおうとしている。民主党の下院院内総務であるハキーム・ジェフリーズは、「共和党は現時点で真剣ではない」「彼らには誠意ある対話への意思がまったくない」と批判しているし、上院院内総務であるチャック・シューマーは、「アメリカ最大の医療危機に対して、共和党案は何一つ、全く何もしてくれない」「予算通過はトランプ次第だ」と発言している。

 他方、共和党上院院内総務のジョン・スーンは、民主党が連邦職員を「人質に取っている」と批判しているし、下院議長であるマイク・ジョンソンは、「チャック・シューマーが下した決定は無責任だ」「彼らは癇癪を起こしている。党派的な主張ばかりだ」とも述べている。

 現在、連邦議会の上下両院を共和党が握っているものの、上院では予算通過に必要な60議席に到達していないため、予算を通すためには二大政党間での調整が必要だ。そこで二大政党の幹部による会談が9月中旬から計画されていたが、23日にトランプ大統領は民主党指導部との会談を突如キャンセルし、「民主党議会指導部と会わないことが、生産的な結果になる可能性がある」とするとともに、政府が閉鎖すれば連邦政府職員を大量解雇すると宣言するなど、敵対的な態度をとった。

 その後、二大政党間の協議は行われたものの、共和党は7月に通過した大統領肝いりの法律(OBBBA、One Big Beautiful Bill Act)で大規模減税などを行う代償として、低所得者向け医療保険(メディケイド)や食糧支援(SNAP、かつてのフードスタンプ)削減など民主党が受け入れがたい項目について非妥協的な態度をとったため、二大政党間での妥協はなされなかった。

 かつて連邦政府閉鎖が発生するのは分割政府の時が一般的だったため、政府閉鎖の責任を二大政党のいずれに帰するのが適切かを判断するのには困難を伴った。だが、トランプ政権下での政府一時閉鎖は共和党による統一政府下で発生しているため、共和党に責任があるというイメージが持たれるのが一般的だろう。実際、10月1日にワシントンポストが行った世論調査では、一部閉鎖に至った主な責任は、トランプ大統領と共和党にあると回答した人が47%で、民主党にあると回答した人の30%を17ポイント上回っている。


新着記事

»もっと見る