2024年12月12日(木)

World Energy Watch

2017年1月6日

 日本ではトランプ次期大統領が孫正義ソフトバンクグループ社長と会ったことが大きく報じられているが、米国ではトランプがマイクロソフト創業者のビル・ゲイツと電話で8分間話したことを多くのメディアが報道した。電話でトランプと意気投合したゲイツは、電話の2週間後の12月中旬にトランプタワーを訪問した。ゲイツは大統領選挙中トランプを評価しないと示唆していたが、電話での会談後出演したテレビ番組では「宇宙開発を進めたジョン・F・ケネディ元大統領と同様に、トランプの米国はイノベーションを通し主導権を取る可能性がある」と持ち上げた。

 ゲイツは地球温暖化問題を懸念しており、国連の会議に出席し解決のための支援を呼びかけるほど問題解決に力を入れている(『アマゾン、アリババ、ソフトバンクも ビル・ゲイツが募る革新的エネルギー同盟』)。彼のいま一番の関心事だが、温暖化懐疑論の立場に立つトランプとは大きく立場が異なる。

 トランプは11月下旬のニューヨークタイムズ紙のインタビューでは「温暖化が人為的な理由により引き起こされることも少しはある」と認め、選挙期間中に離脱すると主張していたパリ協定に関しては「開かれた心で考えたい」と答え柔軟性を示したが、その後の閣僚人事では温暖化懐疑論者の閣僚への指名が続いており、トランプの基本的な立場は変わっていないようだ。トランプの何が温暖化問題を懸念するゲイツの評価を変えさせたのだろうか。

トランプを評価するゲイツ

 11月の大統領選後トランプと電話で話をしたビル・ゲイツは、その後いくつかのマスコミのインタビューを受けたが、その中でゲイツはジョン・F・ケネディに触れ、「エネルギー分野であれ、教育、感染症防止であれ、トランプ政権は物事を組織立って進め、法的な障害を取り除き、イノベーションを通し米国のリーダシップを発揮するだろうという前向きの見方ができる」とトランプとイノベーションについて会話した結果を述べている。

 ゲイツはさらに「エネルギーと気候変動問題は米国がリーダシップを発揮するチャンス」とトランプに話し「多くのイノベーションの機会があり、適切に研究を進めれば大きな収益が期待できる」との話をしたと述べている。ゲイツは「エネルギー分野の研究・開発において米国が先頭を切ることが重要だ。この分野は政府予算のなかで大きな金額ではないが、シェールガスと同様に、(低コストの低炭素エネルギーが)米国経済を助けることになるとトランプに働きかける」とも述べている。

 米国企業の海外進出に反対し、保護主義を主張しているトランプはイノベーションの重要性をどのように認識しているのだろうか。大統領選時のトランプの主張から考えてみたい。

トランプ大統領を生んだラストベルト地帯

 トランプが大統領戦に勝利した大きな要因は、接戦州と呼ばれる共和党、民主党の票が常に拮抗するペンシルべニア、オハイオ両州を制したことだった。トランプが石炭復活を打ち出し、クリントンが石炭縮小を主張したことが、アパラチア炭田北部に位置する両州の票の行方を左右したことは『トランプ大統領で得をする日本企業は?』で述べた通りだ。

 接戦州となったペンシルべニア、オハイオ州に加え、2008年、2012年の大統領選時オバマが勝ったウィスコンシン、ミシガン両州においてもトランプが勝利したことも、トランプ大統領選出を確たるものにした。日本のメディアでも度々報道されたラストベルト(錆び付いた地帯)と呼ばれる地域だ。


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