2023年1月27日(金)

World Energy Watch

2017年1月6日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 製造業が衰退した地帯と呼ばれるものの、この両州では今でも製造業で働く人が多い。州の雇用者のうち製造業が占める比率をみると、表の通り、ウィスコンシン州は全米2位、ミシガン州は3位だ。

 しかし、自動車産業を中心に製造業は衰退し、製造業を離れた人は、州外に去るかあるいは医療・福祉を中心とした産業に転職した。全米の製造業で働く人は2000年には1700万人だったが、減少を続け、最近歯止めがかかったものの、今は1200万人だ。図-1の通り、この間米国の全雇用はリーマンショックによる落ち込みを除けば、順調に伸びている。

 製造業で職を失っても、米国の失業率は高くなく職はある。ラストベルト地帯の失業率も高くない。しかし、大きな問題がある。製造業ほど稼げる産業が州内にないことだ。図-2に米国の産業別賃金を示した。製造業の賃金は平均より高いが、医療福祉を含む教育・健康産業は平均を下回っている。製造業が衰退することの問題は高賃金の職場が失われることなのだ。米国を再度偉大な国にと、製造業復活を謳ったトランプが両州で支持を集めたのは製造業の高賃金を求める有権者が多くいたためだ。

製造業復活を謳うトランプだが

 トランプは、製造業衰退の理由をメキシコなどへの米国製造業の海外進出、あるいは自由貿易により安価な海外製品が流入するためとし、TPPをはじめとする自由貿易には反対する姿勢を示した。工場のメキシコ移転を検討していた空調機器メーカ・キャリアなどの企業は、移転を諦めることになった。

 しかし、米国の製造業が雇用を失ったのは、海外進出のためでも自由貿易のためでもない。図-3に日米の製造業の付加価値額が示されている。米国の付加価値額は順調に伸びている。付加価値額が伸びているにもかかわらず雇用が増えないのは、生産性が伸びているためだ。海外移転を検討するのは主として労働集約型であり付加価値額が相対的に低い部門だ。あるいは自由貿易により輸入が行われるのは米国製品より競争力があるからだ。海外移転あるいは自由貿易を規制すれば、一時的に雇用増が実現するにせよ、付加価値額、賃金が高い製造業が米国内に育つとは考え難い。


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