トランプも、この点を十分理解しているのではないか。人気取りのために海外移転、自由貿易規制を持ち出したが、製造業の雇用を増やすための根本的な解決策にはなりえないことを理解しているのだろう。
革新的な技術を創り出し新製品の形にすることにより製造業を復活させるのが、付加価値額の高い雇用を生み出す手段だ。それをトランプは理解しているから、ゲイツがトランプを評価することになったのだろう。
イノベーションに加え製造業が競争力を高める一つの手段は、競争力のあるエネルギー供給を受けることだ。ゲイツはエネルギー分野でのイノベーションを考えている。
ビル・ゲイツのエネルギー投資ファンド
2015年12月にパリで開催された気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に出席したゲイツは、世界の富豪と共に二酸化炭素を排出しないエネルギーへの投資を行う革新的エネルギー同盟構想を発表した。
トランプとの電話での会話後の昨年12月中旬、ゲイツはこの構想を実行するためのファンド、革新的エネルギー・ベンチャーの立ち上げを発表した。ゲイツが会長に就任予定のファンドの規模は当初10億ドル(1150億円)、出資者にはアマゾンのジェフ・ベゾス、ジョージ・ソロス、アリババグループの馬、ソフトバンクの孫などが名を連ねている。
ファンドの目的は、二酸化炭素を排出しない競争力のあるエネルギーの開発であり、増殖炉を含む原子力、地熱、風力、太陽光、送電、蓄電技術などへの投資だ。ゲイツによると当初の10億ドルは4、5年間の投資を支える資金とのことだが、最終的な投資規模は未だ決まっていない。
ゲイツは原子力の新技術開発のためテラ・パワーを立ち上げ、個人資産を投入しているが、このファンドの原子力分野への投資は最大で投資額の25%にし、他分野への投資を主にするとのゲイツの意向だ。低炭素エネルギーのコスト引き下げを実現するための鍵はイノベーションとゲイツは強調している。
ゲイツは、「トランプ政権は割の良い政策を好むから、低炭素エネルギーのイノベーションも検討すると確信している」と述べている。製造業復活を謳うトランプもエネルギー分野でのイノベーションの重要性を認識しているということだ。