2025年12月6日(土)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2025年10月21日

 トランプはプーチンに対して、「君の敵にトマホークを数千発渡しても構わないか?」と尋ねたという。そして、「彼(プーチン)はその案を気に入らなかった」とジョークでも言うように笑いながらトランプは明かしたのである。このやり取りを知ったゼレンスキーは、その時点で翌日の首脳会談でトマホークの供与が認められないことを悟ったに違いない。

 また、トランプは、近くハンガリーのブダペストでプーチン大統領と首脳会談を行うことで合意したとも明らかにした。8月にアラスカで会って以来となる。

会談翌日に全米で反トランプ集会

 このような最近のトランプのウクライナでの戦争終結に向けた動きについて、米国内では見方が分かれている。トランプ支持者にとって、これは大統領の世界平和に向けた一連の活動の一環であると肯定的に評価されている。また、ブダペストでの米ロ首脳会談にも期待が持たれている。

 一方、民主党支持者の多くには、国内における様々な混乱から国民の目をそらすための目くらましなのではないかと捉える向きも多い。米ウクライナ首脳会談の翌日には、全米で反トランプデモが予定されており、それがこれまでで最大規模になるであろうことは伝えられていた。ガザの問題に対するマスコミ報道が一段落し、報道の中心が国内に戻ろうとしている中、今度はウクライナに向けようというのである。大統領本人は、水曜日の時点で「参加者はごくわずかだと聞いている」と述べてデモに無関心ではいられないことを示していた。

 実際、10月18日になると、全米の2700カ所以上で反トランプ集会が開かれ、700万人近くが参加した。これは「王はいらない」集会と名付けられ、法律に従わず王のように振る舞うトランプを批判するものであった。イギリスの国王ジョージ3世の圧政のもと、独立に踏み切った歴史をもつ米国にとっては、王に擬えられて批判されるということ自体が重いものであるといえる。

全米で繰り広げられた反トランプ集会( Pacific Press /gettyimages)

 全米各地で、人々が「王はいらない」とか「我々はあなたを欲していない」などのプラカードを掲げて集まっていた。多くが手作りのプラカードであった。

高まる権威主義への批判

 反トランプ集会の規模がこれほどまでに膨れ上がったには、様々な理由があった。まず、10月1日に始まった政府閉鎖に対して政権が無策であるという危機感が大きかった。だがなによりトランプによる権威主義的政治がその程度を強めているということが第一にあった。

 令状のない移民の暴力的収監が全米で行われ、大学には強い圧力がかけられている。州兵が恣意的に動員され、司法省が政敵を排除することに用いられている。

 トランプは、それらの力で人を怯えさせ、孤立させ、トランプに従うしかないと思い込ませていると専門家は語る。これらの集会が、怯える人々に、自分たちは孤独ではないと知らせるためにも役に立っているというのである。


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