自民党総裁に高市早苗氏が選出されたかと思うと、公明党が連立政権から離脱して、一時は新政権の構成が見通せない事態となった。結果的に野党連合は成立せず、自民党と日本維新の会の連携による政権の発足が濃厚となってきた。
野党の結集ができなかった国民民主党は、安保防衛問題が最大の障壁になったとしているが、実際は違うと思われる。最大の理由としては、立憲民主党と国民民主党の政策が「水と油」であったことだ。
どちらかといえば、物価高と増税に苦しむ現役世代の利害を代表して「将来へ向けて財政規律より現在の生活の確保」を主張しているのが国民民主党である。これに対して、どちらかと言えば「現在の生活も大事だが、それよりも将来の日本の破綻回避」を優先する立憲民主党の違い、つまり財政への態度の違いが深刻な対立の要因である。
財源なきままに手取りを保障するのか、現在の生活苦より財政破綻への恐怖を優先するのか、これこそ国家観、統治姿勢における重要な選択肢である。こんな重大な論点について、堂々と四つに組んだ論戦ができないのであれば、両党ともに政権担当の資格はないと言っていいだろう。
それはともかく、保守派ということで著名であり、総裁選の序盤では右派ポピュリズムを意識した言動が批判された高市氏だが、総裁選出後の言動は熟練した職業政治家として安定感を示している。とりあえず、首班指名と組閣を粛々と進めて、何としても安定した政権をスタートしていただきたい。
