私たちは今、どのような世界を生きているのか――。それを象徴する場面は、中露朝の3首脳が初めて一堂に会した9月3日の「抗日戦争勝利80年記念式典」ではないだろうか。式典を観閲する北京・天安門の楼上には、ウクライナ戦争を仕掛けた侵略国ロシアのプーチン大統領、その戦争に兵を送り、弾薬を提供する参戦国北朝鮮の金正恩総書記、その2人を両脇に従えるように、中央にはロシアの戦時経済を物心両面で支える中国の習近平国家主席が並び立った。
この演出の目的は、米国を中心とする西側諸国が主導してきた戦後の国際秩序を改め、中国がロシアと北朝鮮を従えて新たな国際秩序をつくるという明確な意思表示にほかならない。国内を強権で統治し、力による一方的な現状変更を正当化し、しかも核戦力を増強する3カ国と向き合う日本にとって優先すべき外交、安全保障政策とは何か――を考える。
試金石は日米首脳会談
衆院で与党が過半数割れしているので確定したわけではないが、自民党の新総裁となった高市早苗氏が女性初の首相となる公算が大きい。運のいいことに就任直後の10月下旬から外交日程が集中していることで、高市氏が多くの国々と厳しい安全保障環境を共有し、日本の姿勢を示す格好の機会となる可能性がある。
まず最大の焦点は、米国のトランプ大統領の来日であり、首脳会談を通じて、日本は同盟のさらなる強化と深化を図らねばならない。そこで高市氏が持ち出せる手駒の一つは、総裁選でも主張してきた安全保障関連3文書の見直しだ。今の「国家安全保障戦略」など3文書は、岸田文雄政権が2022年12月に改定し、27年末に再改定が予定されている。
だが、今の3文書は米バイデン政権下でまとめられた内容であり、近く公表されるトランプ政権下における米国の国防戦略などと歩調を合わせ、見直しに取り組む意欲を示す必要がある。見直しにあたっては、日米で外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)を重ね、トランプ政権が求める防衛費の増額や、日本が独自に判断する国内総生産(GDP)2%を超える防衛費の規模などを議論することが大切だ。
