と同時に、高市氏が信奉する故安倍晋三氏による「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の重要性を、いま一度トランプ大統領との間で再確認し、日米に韓国、フィリピン、オーストラリア、インドなどFOIP地域の同志国が結集する<平和のためのネットワークづくり>を訴える必要がある。それはトランプ大統領が招いた米国の信頼失墜を復元させる作業でもあり、まさにトランプ大統領の訪日こそ、高市外交の試金石となるだろう。
グローバル・サウスを取り込め
日米首脳会談の前後には、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議や、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が予定されている。懸念があるとすれば、それは冒頭で記した北京での式典に26カ国の国家元首や首脳、軍幹部らが出席しているが、その大半がグローバル・サウスと呼ばれる新興国や途上国で占められていたという事実である。
経済大国となった中国の影響力が増す一方で、トランプ大統領の関税をめぐる対応でインドやブラジルが中国に急接近し、さらに、トランプ政権が米国際開発局(USAID)を閉鎖したことで、グローバル・サウスへの援助が急減してしまうことが想定される。それだけに高市氏には日本の姿勢、明確なメッセージを発してもらいたい。
そのヒントは石破茂首相が国連総会で行った9月23日の演説だ。石破氏は「アジアの人々は戦後、日本を受け入れるに当たって寛容の精神を示してくれた」と回顧したが、日本は戦後、フィリピンやインドネシアなど対日賠償請求権を放棄した多くのアジアの国々に対し、経済協力や援助を進め、関係を改善、構築してきた。
先人たちが築き上げた関係は今でも健在で、今年4月、シンガポールのシンクタンクが行ったASEANに加盟する10カ国の識者ら2000人余りを対象とした意識調査で、「最も信頼できる国・地域」として「日本」を選んだ割合は66.8%に達し、調査を開始して以来7年連続の1位となっている。外交でこの数字をどう活用するかだ。
ASEANやAPECの首脳会議では、高市氏には「最も信頼できる国」のトップとして、政府間の開発援助(ODA)にとどまらず、民間企業の技術協力や供給網(サプライチェーン)の構築など、グローバル・サウスの国々をビジネスパートナーと位置づけ、信頼できる日本との協業を呼びかけるなど幅広い分野で協力の枠組み作りを進めてもらいたい。それが日本の経済を立て直し、国力を強化する道でもあるからだ。
