2025年12月5日(金)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2025年9月17日

 既報の通り、自民党総裁選が9月22日告示・10月4日開票で行われる。今回の本欄で石破茂政権の評価を総括することは控えるが、インフレ下の政権運営はどの国であれ苦労するものであり、発足時点から少数与党であったという事実も割り引いた上で評価しなければフェアではない。

 現に、支持率が回復基調にある中で退陣するという事実もあり、「首相を挿げ替えれば上手くいく」と思っている世論は多くないはずだ。インフレが深まる中で政局流動化が深まる危うさについては欧州債務危機時の経験になぞらえて、前回のコラム『〈欧州債務危機が与える教訓〉参院選・与党過半数割れで起こりうる日本経済への影響とは?』で深く論じているので参照にされたい。

石破首相の辞任以降、日経平均株価は上昇を続けている(つのだよしお/アフロ)

 兎にも角にも、石破首相の辞任表明の瞬間から金融市場の関心は既に次期政権に移っている。周知の通り、辞任の一報を受けて以降、日経平均株価指数は断続的に最高値をつけている。

 為替市場でも米国の利下げが大幅に織り込まれ、日米金利差が明確に縮小しているにもかかわらず、ドル/円相場は147~148円で高止まりしている。次期首相へのコンセンサスは定まっていないものの、「拡張財政路線に伴うインフレ継続、それと整合的な円安・株高」への期待は明らかに根強い。1年前の総裁選で石破首相と接戦を演じた高市早苗議員を念頭にトレードが進むことは必然の帰結であろう。

 これに次いで小泉進次郎議員、林芳正議員、茂木敏充議員といった名前も散見されるが、高市議員ほど明確な「色」を持つわけではない。辞任報道以降で続いている円安・株高は高市トレードの一端を示したものに違いない。

 ちなみに総裁選の実施方式は1人1票の「国会議員票」とそれと同数の「党員・党友票」の合計を競うフルスペック方式が採用されることになった。昨年の総裁選の経緯を踏まえると、党員から多くの支持を集めたのが高市議員であった。フルスペック方式を前提とすれば、低金利・拡張財政路線から円安・株高が促されるのが自然である。


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