2025年12月5日(金)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2025年9月17日

「利上げはアホ」を通せるか?

 もっとも、高市議員を取り巻く政治環境は1年前とは異なる。過去1年間で行われた2回の国政選挙で明らかになったのは世論の右傾化であり、これ自体は高市議員への追い風となる可能性もあるが、相対的に見ればより右派色の強い参政党の台頭から割を食うはずである。だとすれば、高市議員自身がより広範な支持を取り込まなければ先細りが見えているのも事実である。

 周知の通り、春先以降、長期・超長期を中心に円金利が騰勢を強めており、これに対する世論の不安も根強いことから、拡張財政と金融緩和を一点張りで主張する極端なリフレ色を温存した上で広範な支持を集めるという方針転換もあり得るだろう。

 しかし、財政政策への拡張思考は温存されたとしても、高市議員は「利上げはアホ」と金融引き締めを一蹴した過去がある。だとすれば、金融政策については踏み込んだけん制が繰り返される可能性はある。

 とはいえ、金融市場がそれを看過してくれるだろうか。もはや財政政策であれ、金融政策であれ、インフレ下の日本でそのアクセルを踏もうとする行為は円金利上昇と円安の併発を招く。

 実際、最近の日米金利差縮小は円金利上昇に主導されているものだが、これに呼応した円高は全く起きていない(図表①)。要するに、日本国債と円の下落が併発している状況であり、為政者はここからアラートを汲み取るべきではないかと思われる。

 むしろ、世論は円安抑制のための利上げであれば支持する部分も多くなっていると思われ、第二次安倍晋三政権時のように、「金融緩和を謳えば世論が盲従してくれる」という状況に無いことは確かである。


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