自民党の臨時総裁選をめぐる意見集約前日、石破茂首相が急遽、退陣を決意した。党内の亀裂、分断はかろうじて避けられたが、後継総裁選が選出され新体制が始動するまでなお政治の空白が続く。
参院選からの自民党内の惨状は見苦しいというに尽きた。国政2度を含む3連敗にもかかわらず居座りをはかる総理・総裁、旧派閥を中心に徒党を組んで、自らのリーダーに執拗に退陣を迫る議員たち。手をこまねいているだけで政権奪取の意欲もない野党――。
重要政策課題は手つかずのまま。世界の動きは速い。国民を置き去りにした一方で国際社会から置き去りにされつつあるのが今の日本の政治だ。
地位に執着、実質的には不信任
決断は、誰の目にも遅すぎたと映った。
首相は7日夕の退陣表明記者会見で、「日米の関税措置に関する交渉に一区切りついた」ことで、この時期になったと説明した。しかし、日米交渉の決着を理由に退陣を決意したというなら、合意文書を取り交わした5日の時点で表明しておけば、実質不信任、引きずり降ろされたという印象を薄めることができたろう。
首相の言葉とは裏腹に、「各議員、都道府県連の意見集約の事前票読みで、決定的不利が明らかになったからだ」(元閣僚のベテラン議員)という見方が真相だろう。
