2025年12月5日(金)

21世紀の安全保障論

2025年10月9日

優先順位を明確に

 石破首相が退陣表明した翌日の9月8日、中国共産党の機関紙「人民日報」系の「環球時報」は、「石破政権は安倍、岸田両政権のように高い頻度で中国のレッドラインを超えることはなかった。今後の日中関係は新首相の姿勢次第だ」と注文を付けており、自民党内きっての保守派として知られる高市氏が新総裁に選ばれたことで、中国は今後、様々な挑発を仕掛けてくることが予想される。

 高市氏には決して挑発に乗らず、毅然とした対応が求められる。悪手は自らが中国を挑発することだ。それは靖国神社への参拝であり、中国だけでなく韓国の反発を招くのは確実だからだ。本稿の冒頭で、強大な軍事力を背景にルールに基づく国際秩序を破壊しようと目論む中露朝の脅威を提示したが、それら3カ国と対峙する日本にとって今、韓国との関係を悪化させる余裕や選択肢などない。

 参拝する気持ちは英霊に哀悼の意を捧げ、世界の恒久平和を願うものであっても、その結果がもたらす甚大なリスクを考えれば、現時点で高市氏が靖国神社に参拝する優先順位が高いとは思えない。ただし、靖国参拝や竹島問題など日韓関係には共存共栄の関係を構築するための“阻害要因”が存在していることも確かだ。

 大統領就任前に日本を「敵性国家」と呼ぶなど反日的言動が多かった李在民氏だが、大統領就任後は初の外遊先として日本を選び、シャトル外交の継続や未来志向の日韓関係の構築など大きく軌道修正している。“阻害要因”については、日韓双方がその存在を認め、2人が腹を割って話し合うなど時間をかけて知恵を絞り出してもらいたい。

 外交、安全保障政策には常に優先順位がある。まず日本は中露朝の脅威と向き合い、日米同盟を強化する。そのうえで、グローバル・サウスの国々との連携を深め、インド太平洋地域の平和を維持するために、価値感を共有する同志国とのネットワークを構築することに勝る外交目標はない。それを忘れないでもらいたい。

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