2025年12月5日(金)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2025年10月21日

 特に不動産に関して、どうして世界の投機マネーが大量に流入しているのかというと、西側の信用システムにカバーされている「価値」への評価に加えて、円安による割安感が後押していているからだ。このことは、同時に、円高イコール売り浴びせとなるリスクとなっている。既に十分に膨張している不動産バブルだが、円高がこれを叩き潰す中で、日本の国内経済のファンダメンタルズに再起不能のダメージを与える可能性がある。

政権を吹き飛ばす可能性も

 兆候は既にある。日本メディアの共同インタビューに対するベッセント財務長官の発言が10月16日に報じられたが、その中には「日本銀行が適切な金融政策の運営を継続すれば、円相場は適正な水準に落ち着く」という言明がある。

 これは、高市氏が総裁選に勝って、円安が進行する中の発言である。長官の言う「適切な」というのは、トランプ政権としては、過度の円安は歓迎しないという意味であり、これはかなり真剣な警告として受け止めるべきだ。

 2022年に英国で発生したトラス・ショックの場合は、新首相の政策により財政規律が緩むという懸念からの通貨安暴走であり、政権を瞬時に吹き飛ばしてしまうインパクトがあった。不吉な話をするようで恐縮ではあるが、今回「ショック」が起こるとしたら、過度の円安がトランプ政権の口先介入を誘発するというシナリオというわけだ。高市氏にはトラス氏の轍を踏まないよう最新の注意を払って、安定政権への基盤を固めていただきたい。

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