これに対して共和党関係者からの反応は少なかった。トランプ支持の急先鋒であるジョンソン下院議長が、反トランプ集会に集まっているような人々は「アメリカを憎んでいる」と批判したのが目立った程度だった。
首都ワシントンで開かれた集会には民主党のバーニー・サンダース上院議員が登壇した。彼はジョンソン下院議長の言葉に対して、アメリカを憎んでいるからではなく、愛しているからこそ集まったのだと述べた。サンダースは、米国という国自体が、自身を法律と同一視する王による政府を取り除き、人民自身が統治する政府をつくるという実験の中で生まれて来たと建国期に思いをはせる。そしていまやその実験自体が危険な大統領によって危機に瀕しているというのである。
その上でサンダース議員は、その危険性を具体的に列挙した。ポートランドやシカゴの平和的デモを反乱と見なし、軍を派遣する。メディアを訴えると脅して怯えさせ、表現の自由を保障した憲法修正第一条を侵害する。敵対する者には逮捕すると脅し、自分に不利な行動をとる連邦職員は解雇する。そして、外国から多額の贈り物を受け取ることで憲法を蔑ろにしている。
米ロ首脳会談開催が目的か?
反トランプの民主党支持者の中には、ウクライナ和平へ向けての動きは、このような国内の混乱から目をそらすだけではなく、トランプにとって都合の悪いエプスタイン問題から世間の目をそらすためと見る向きもある。
8月の米ロ首脳会談の前も、エプスタイン文書にトランプの名前があるのではないかといったニュースが連日取り上げられ、若き日のエプスタインとトランプが仲良さそうにふるまう映像が日夜放送されていた。それが実際、ウクライナ和平という多くの人命がかかった重要な問題について、当事者の一人であるプーチン大統領と米国の大統領が直接アラスカで会談するとあって、米国内の報道は米ロ首脳会談一色になったことは記憶に新しい。
前回の米ロ首脳会談は、トランプがその成果を誇ったものの、和平につながるような果実を得ることはできずに終わった。今回も同様の結末になるのではと危惧されている。
批判的視角から見れば、プーチンが首脳会談に応じたこと自体がトランプにとってはありがたいことであるといえる。すなわち、トマホークをウクライナに供与しないということでトランプはプーチンに貸しをつくり、プーチンは仰々しく米ロ首脳会談に応じることですでに借りを返しているという見方もできるのである。
もちろんトランプの外交手腕によって皆が納得する形での和平が実現するかもしれない。いずれにせよ注目しないわけにはいられない所以である。
