原油も買わない
同じことは、原油についても言える。今回のプーチン大統領の訪印は、インドがロシアから輸入する原油を大幅に減らしはじめたタイミングで起きた。プーチン大統領は、原油を「途切れることなく供給」し続ける用意があることを表明したが、インド側が応じなかったようだ。
今、インドは、トランプ政権から、ロシアの原油を輸入しないよう圧力を受けている。そして、関税を上げられ、50%もの関税を払わされている。しかも、トランプ政権がロシアの主要な原油輸出企業にかけた制裁により、ロシアから原油を輸入しても、もうからなくなっている。
だから、インドの国営石油会社は、ロシアからの原油輸入を継続するものの、インドの民間会社はロシアからの原油輸入をやめつつある状態で、インドがロシアから輸入する原油は大幅に減少する。
プーチン大統領が訪印したのは、この流れを止め、インドに原油を買ってほしいからと思われる。しかし、インドは応じなかったのである。
中国対策でも頼りにならない
インドにとってロシアの魅力が落ちているのは、武器と原油だけでなく、ロシアが中国に傾斜しているためでもある。そもそもインドにとってロシアが重要なのは、インドから見れば中国の反対側にいるロシアが、対中国対策で役に立つと考えたからだ。
インドとロシアの軍事的な関係は、特に1962年の印中戦争の際にソ連がインドを支援したことに始まり、71年の印ソ平和友好協力条約に至った。その第9条では、第三国に対する共同軍事行動について書かれており、インドは「非同盟」と主張していたが、この条約は同盟にあたるものである。だから、インドとロシアは、対中国で協力し合ってきたのである。
しかし、ロシアのウクライナ侵略以降、西側の経済制裁下のロシアは、中国との貿易に依存するようになっている。今年9月に中国で行われた軍事パレードでは、中国、ロシア、北朝鮮、ベラルーシ、イラン、ミャンマーといった国家の指導者が1枚の写真に写り、アメリカに対抗する極としてアピールしつつある。もはや中国対策で、インドにとってロシアは、頼れる存在ではなくなった。
もしロシアのウクライナ侵略が終われば、この状況が変わるかもしれない。インドはそう期待し、ロシアの原油を買って、ロシアが中国だけに依存しないように、ロシアを買い支えてきた。しかし、トランプ政権の誕生で、どこまでロシアを支えることができるのか、インドにも限界が出つつある。
