2025年11月18日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月4日

 カール・ビルト元スウェーデン首相が、プーチン大統領のオプションは尽きた、欧州がウクライナを支え続ける限り、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に服従を強いることはできないと2025年10月16日付Project Syndicateで論じている。

(ロイター/アフロ)

 ウクライナ戦争の結末は欧州全体にとって重要である。紛争の根本原因は、プーチンのロシア帝国復活への執着にある。しかし、巧く行っていない。

 22年2月以来3年半が経ったが、当初の侵略部隊のほとんどは消滅した。プーチンは3倍の新たな兵を前線に配置しているが、ウクライナの20%に満たない領土を支配しているに過ぎない。

 プーチンが戦争に勝つ方途はあるのか。彼の第一のオプションは、ウクライナの軍事的敗北を追求し続けることである。

 双方の技術の急激な変化によって、戦争の性格は大きく変化した。双方は相手の枢要なエネルギー・インフラを標的にしている。しかし、ロシアがウクライナを敗北せしめる可能性は非常に小さい。ほぼ2年の間、ロシア軍は重要な攻撃作戦を遂行し得ていない。

 プーチンの第二のオプションは、ロシアに有利な解決をウクラナに押し付けるようトランプを説得することである。アラスカ会談では、そうなりかけた。しかし、欧州首脳が迅速に介入し、欧州のウクライナに対する支持がこのオプションを効果的に封じた。

 第三のプーチンのオプションは時間稼ぎをし、欧州の支援が衰えるのを待つことである。トランプの下で米国の対ウクライナ支援がほぼ枯渇して以来、すべての負担は欧州にかかることになった。年間600ないし800億ユーロは小さな問題ではない。

 しかし、欧州のウクライナに対する政治的支持は強固である。フランス、スペイン、イタリアなど財政が苦しい諸国は大きく貢献出来ないが、エネルギー価格の高騰で潤っているノルウェーは米国が抜けた分の多くを埋めることが出来よう。さらに、ロシアの凍結資産を裏付けとしてウクライナに1400億ユーロの融資を提供する提案は、ウクライナの経済と国防生産を梃入れ出来るであろう。


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