もし、欧州のウクライナへの財政支援が続き、トランプがゼレンスキーに服従を強いることが出来ないとすれば、ロシアには勝利への信頼に足る道はない。もちろん、プーチンはエスカレーションを試みるかもしれないし、停戦に合意し、それを勝利のように仕立てるかもしれない。しかし、ウクライナが主権と独立を維持する限り、それはプーチンの失敗を意味する。
領土は重要であるが、主権が鍵である。その後、主権国家のウクライナの安全を確保し再建することは過酷な仕事となるが、このプロセスには欧州連合(EU)加盟、経済改革、強力な防衛態勢が含まれることになろう。
このシナリオによれば、プーチンにとって唯一可能な道は、その帝国主義的な夢を諦め、多数の中の一つの国としてのロシアを強くすることに集中することであろう。このことに気付くことが早いほど、ロシアとその近隣諸国にとって好ましいこととなろう。
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不可欠な欧州の役割
カール・ビルトは、プーチンのオプションは尽きていると書いている。プーチンのオプションを封じるには、欧州が確固としてウクライナを支持し続けることが不可欠である。
アラスカでの米ロ首脳会談の後、トランプは、それまで目標としていた停戦ではなく、「領土交換」を含む和平を目指すべきだとプーチンに同調するが如き発言をした。危険を察知した英、仏、独、北大西洋条約機構(NATO)、EU など欧州首脳が、8月18日、ウクライナを支援し擁護するため、ゼレンスキーと共にホワイトハウスに急遽集結し、トランプと会談した。トランプがゼレンスキーに一方的に譲歩を迫る事態は避けられた。
そして今また、ゼレンスキーを支援し擁護する立場が確固たるものであることを示す必要に欧州は迫られている。10月17日、ホワイトハウスでゼレンスキーと会談したトランプは、ドンバス全域をロシアに割譲することを含め、戦争終結のためにプーチンの条件を呑むよう要求し、プーチンが望めば、ウクライナを「破壊」するだろうと警告した。
トランプは偽りの平和でも構わないので停戦を成就したいばかりにゼレンスキーに圧力をかける言辞を弄しているのかも知れないが、彼は圧力をかける相手を間違えている。非難されるべきは侵略を始めたプーチンである。それ故、欧州の役割は不可欠だ。
