昨年秋の習近平国家主席との首脳会談において関係安定化を演出し、台湾有事をめぐる日中対立には距離を置くトランプ政権。12月4日には「国家安全保障戦略(National Security Strategy:NSS)」を発表した。各政権が示す政策文書だが、今回のNSSは過去とは大きく異なる様相を呈した。
10月末のアジア歴訪から12月中旬にかけて、トランプ大統領は活発に動き、日本、中国、台湾に対して強いメッセージを発した。そこから浮かび上がるトランプ2.0のアジア外交とは、いかなるものなのか。本稿では、長期的な展望を含め、その特徴について考察する。
モンロー主義の復活と
対中スタンスの変化
第2次トランプ政権が発表した「国家安全保障戦略(NSS 2025)」は、トランプ氏の志向に忠実に沿いつつ、政権内の実務チームが理論と政策を整合的に組み上げた文書である。「トランプ2.0の米国」が掲げる外交・安全保障ビジョンを、かつてなく体系的かつ明確に言語化したものといえる。
同戦略は基本原則として、米国が追求すべきは「米国民を守ること」であると宣言する。その上で、過去の政権が米国を「グローバルな守護者」として世界の安全保障を担い、民主主義や人権のために他国の問題へ介入してきたことを「誤り」であったと断じる。
優先課題は、国土安全保障、国境管理、移民問題、薬物対策、そして経済安全保障とされた。他国が米国の利益を脅かす場合には関与するが、そうでなければ内政干渉は行わず、民主主義体制ではない国家とも安定的な関係を築くことを正面から認めた。米国の伝統的な外交戦略が公式文書の中で、ここまで明確かつ正面から否定されたことはこれまでになかった。また、「大量移民の時代は終わった」と明言し、自由貿易やグローバル化の路線をも明確に退けている。
こうした基本方針に基づき、西半球を最重要地域と位置付ける戦略が描かれる。「モンロー主義のトランプ的コロラリー(帰結)」と書かれているとおり、西半球を米国の勢力圏として明確に位置づけ、この地域に関しては、各国の国内政治にも積極的に関与していく方針が示された。それが示されたのが1月3日、ベネズエラに軍事介入し、マドゥロ大統領を拘束したことだ。その直前には、中国の特使が会談しており、中国の影響力の排除も追求していく可能性がある。
そして西半球に次ぐ重要地域としてアジアが登場する。最も注目されるのはやはり中国だが、その扱いは、従来の戦略─すなわちバイデン前政権の「NSS 2022」はもとより、第1次トランプ政権の「NSS 2017」と比べても、明確に異なるものとなっている。
