米国では「対中強硬派」が主流
アジア外交のこれから
このように、トランプ2.0の対中外交には、従来の路線からの変化が随所に見られる。もっとも、これをもってG2的な世界観が優先されると断じるのは早計である。まず、おそらくトランプ氏の思考の大きな部分を占めるのは短期的な利益の最大化にある。26年に予定される貿易合意を見据えて、中国との関係安定化を図ろうとする意図が先行しているということである。
「NSS 2025」も一連の言動も、現時点でのトランプ氏の思惑を反映している部分が強い。米国が世界における優越的地位を占めることへのこだわりに変わりはないため、中国がその地位を脅かすとみれば押さえつけにかかるだろう。
また、米国の政策関係者全体をみれば、依然として対中強硬路線が主流を占めており、トランプ氏の個人的な対中観はむしろ少数派である。先に述べた「NSS 2025」における台湾への強いコミットメントは、マルコ・ルビオ国務長官や、エルブリッジ・コルビー国防次官が強く主張して盛り込まれたものと考えられる。議会においても、上院では超党派の議員がAI半導体の対中輸出規制を義務付ける法案を提出し、12月18日には中国へのバイオ投資規制や台湾への軍事支援強化を盛り込んだ国防授権法案が成立した。
26年の中間選挙で共和党が議会での多数を失えば、トランプ政権はレームダック化し、早くも焦点はポスト・トランプがどうなるかに移ってくる。後継者候補の筆頭とみられるJ・D・ヴァンス副大統領が、中国に対してトランプ氏と同様の方針を取るかは定かではない。
同副大統領のメンターであるピーター・ティール氏が強い反中イデオロギーの持ち主である点にも留意すべきである。エプスタイン問題の影響で、トランプ氏の後継者選びにおける影響力が低下する可能性もある。
したがって共和党政権が継続したとしても、トランプ2.0のアジア外交がどこまで継続するかは不透明な点がある。とはいえ、「アメリカ・ファースト」の基本思想が引き継がれることに疑いはなく、同盟国に対して防衛負担の増大を求める姿勢に変化はないだろう。いずれにしても日本には、台湾有事の可能性を含め、東アジアの安全保障環境が一層厳しさを増すことを前提に、自国の防衛力を強化する覚悟がこれまで以上に求められる。
