2025年12月7日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月4日

効果的となり得る凍結資産の活用

 EUは10月23日にEU首脳会議を開き、ロシアの凍結資産を活用したウクライナに対する新たな財政支援について議論した。これは、欧州委員会委員長フォン・デア・ライエンが9月10日の欧州議会における一般教書演説で明らかにした「賠償ローン」と称する構想である。

 この構想は複雑だが、大体、次のようなことである。ベルギーで凍結されているロシア資産は債権で保管され、順次満期に達し、約1850億ユーロになる。このうち1400 億ユーロを無利子でウクライナに融資する。戦争終結後、ロシアにはウクライナに与えた損害を賠償せしめるべきであり、ウクライナは賠償された場合にのみ返済に応ずる。ロシアが賠償しなければ、ロシアの資産は凍結され続ける。

 従って、どちらに転んでも、ロシアは1400億ユーロを失う。しかも、ロシア資産を没収することにはならない。しかし、いずれEUが1400億ユーロの返済を求められる法的リスクがないとは言えず、その辺りは今後検討されるようである。

 今回のEU首脳会議では見送られたが、その直後に英国で開催されたウクライナ支援の会議では、ロシアの石油・天然ガスの輸入禁止等に「有志連合」が合意した。

 ビルトが言うように「賠償ローン」が政治的意思さえあれば実現可能な構想なのかは分からないものの、何としてもウクライナを支えるとの欧州諸国の意思は評価すべきであろう。ドイツのメルツは支持を表明している。

 ロシアの凍結資産の活用は主要7カ国(G7)でも検討されている模様であり、我が国も出来るだけ前向きに検討すべきであろう。

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