2025年12月11日(木)

インドから見た世界のリアル

2025年12月10日

 そこで、モディ政権は、ロシアとは笑顔で接しつつ、実質の合意はなし。アメリカとは、一定の合意ができないか、徐々にアメリカの要求を受け入れ始めているが、長期的に頼るのは無理とも考え始めてもいる。

 そして中国とは、笑顔で緊張をまねかないようにしつつ、いずれくるであろう緊張状態に備えるようになっている。うまくのりきって、インドの国力が増すのを待つ。新しい環境に何とか適合しようとしているのである。

日本にとってのインド

 このインドが置かれた状況は、日本にとってどのような教訓をもたらすものになるだろうか。教訓は、今がチャンスというものである。

 インドにとって、古い友人と新しい友人の両方が信用できないとなると、それは寂しい状態だ。「非同盟」とか「全同盟」といっても、やはり友人は欲しいものである。だから、その部分を埋める友人は、いずれ出てくる可能性がある。その中で、インドにとって、日本は最有力候補である。

 インドの日本に対する片思いは、もともと、伝統的なものである。欧米の植民地だったインドにとって、日露戦争に勝った日本、第2次世界大戦当時、スバス・チャンドラ・ボーズのインド国民軍を支援した日本は、もともと味方だと認識されてきた。

 その結果、インドでは、不思議な議論までが出ていた。ソ連崩壊時には、インドでは日本との同盟を模索する意見も出たし、インドの核兵器反対の専門家は「日本は核兵器なしに大国になった。インドもそうなれる」などという議論まで展開した。

 筆者も、インドで講演した後の休憩時に、インドの学者が近寄ってきて「これからは日本と組んで、アメリカから世界を取り戻すのだ」といわれてビックリしたことがある。筆者は「日本はアメリカとの同盟を裏切らない。そのような裏切らない日本だからこそ、インドも日本を信用できる」といった回答をしたが、どちらにしても、インドにある、日本に対する興味深い先入観は、相当深く浸透している印象を持った。

 インドが、友人を失いつつあるとき、プライドの高いインドは、友人が欲しいなどとは言わない。しかし、実際には、友人は欲しいものである。

 日本は、インドに寄り添い、友人になろうとするべきである。それが、結局は、インドとアメリカの関係を支える基盤にもなり、また、中国の脅威に対抗する上でも、必要になるものと思われる。

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