2025年12月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月24日

 ASPI(豪州戦略政策研究所)のラジャゴパランが、12月4~5日のプーチン大統領のインド訪問では見るべきことは何も起きなかったが、モディ首相にとってはそれが「丁度ぴったり」だったのだろう、という論説をASPIのThe Strategistに掲載している。要旨は次の通り。

インドを訪問したプーチン大統領(左)を公式歓迎式典で迎えるモディ首相(ロイター/アフロ)

 インドの西側パートナー諸国との関係の泣き所はインドのロシアとの強固な関係である。特に、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来、そうである。

 12月4、5日のプーチンのインド訪問には大きな注目が払われ、インドのメディアの報道は両国間で武器と経済の取引が行われるだろうと示唆していた。しかし、プーチンの訪問は「湿った爆竹」(期待外れの意)だった。

 では、この訪問の目的は何だったのか?トランプの政策を巡る不確実性との関連で、インドには他のオプションがあることを証明したい、しかも米国および他の西側パートナー諸国との関係で更なる問題を作り出すことなく証明したいとインドは望んでいたであろう。

 インドは米国との関係で、5月のインドとパキスタンの軍事衝突の解決に対するトランプの貢献についての対立、インドに対する米国の関税を含め、騒々しい局面を通過しつつある。それゆえ、インドには他にもオプションがあることを示すことに熱が入る。

 このことは、首相のモディが9月に天津でプーチンと習近平に会った時に明瞭だった。習近平との間でモディは、2020年の国境での衝突で損なわれた両国関係を落ち着かせることを試みたが、この戦略はうまくいきそうもない。

 しかし、ロシアに寄り掛かることも問題含みである。ウクライナ侵攻はロシアを大きく弱体化したが、ロシアは今や中国にこれまでになく恩義を感じる立場にある。一方、インドはロシアを助ける立場にはない。よってロシアは中国に頼るしかない。

 インドはロシアが引き続き重要であることを示すことを試みたに違いない。外交のプロトコールを破ってモディは空港でプーチンをベアハッグで出迎えた。二人は別々の車ではなく同じ車に乗った。


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