「次の中国」になれないかもしれない、若さが腐るサスペンス
多くの若者が教育を受けていたり、すでに働くことを諦めていたりする状況を反映した労働者人口比率はどうでしょう。PLFSの2023年度調査で15~29歳の労働者人口比率(WPR:働く意思と能力のある人々が、全体の生産年齢人口に対してどのくらいの割合を占めているかを示す指標)は41.7%で、2017年度の31.4%からは大きく改善しています 。それでも、若者の半分以上が実際には雇用されていないという状況です。
また、教育も受けておらず、働いてもいない若者の割合(いわゆるニート率)は、2023年のILO報告書で15~24歳の若者の23.5%でした。これは、2018年の30.8%からは低下していますが、世界平均の20.4%を依然として上回っています。ILOの予測によれば、2024年にはニート率が25.9%に再上昇する可能性が指摘されています。
中国も人口ボーナスを得て、経済成長する期間が1980年代から2000年代にかけてありましたが、失業率の起伏はあったものの、情報化社会も迎えていなかったので若年層が他の若年層からの影響も受けにくく、都市部の若者でも伝統的価値観に基づいた行動規範を持っていたので、「個性」に起因するニート問題はほとんど発生せず、また1999年までは高等教育の大衆化前の時代(※その後は一気に大衆レベルで高等教育を目指すようになった)ですので、低賃金で働きまくって稼ぎまくって成長させまくる、という「経済の歯車として馬車馬のように働く」人民の行動規範につながっていきました。
中国では、第二次産業が立ち上がった後に、第二次産業への就労を間接的に阻害してしまう近代的な教育政策と情報化の波が来ていて、好機を逃すことなく人口ボーナスを活かし尽くすことができました。
インドには大学を含め教育機関は官民揃って大量に設置されています。IITやIIMなどトップ大学は大変レベルが高いものの、粗製乱造とも言うべき様相で設立された末端の大学は教育水準も非常に低く社会問題化しています。形骸化した認可制度のもとで、日本の「Fラン大学」よりも絶望的な底辺校が存在します。働きもせず、勉強や研究も満足にできないような高等教育機関に若年層が在籍することは社会的な損失を生み出すことになるでしょう。
相対的に比較しますと、インドは今まさに人口ボーナスでロケット成長すべきときに、「意識高い」「現代的な」労働問題が発生してしまっていて、これだけ成長ポテンシャルがあるのに好調なスタートを切れないかもしれないのです。残念ながらタイミングの問題です。
若年層の失業率には性別による違いもあります。PLFSの2023年度データでは、若年女性の失業率は11%、若年男性は9.8%で、女性の方が若干高く出ています。深刻なのは女性の労働市場への参加の低さで、全年齢における女性の労働参加率(労働力率)は約25%と非常に低くなっています。高学歴の若い女性ですら、職に就けない現実があります。
ちなみに、日本では女性の労働参加率は年々上がっていまして、2023年度では、15歳以上女性が54.8%、15~64歳女性が75.2%、労働力に占める女性の割合が45.1%になっています。
インドでは、後述するインドの伝統的な社会規範によって、教育を受けた女性が労働市場で活躍できないことが、若者失業問題をさらに悪化させています。
インドの労働問題の根源的な「闇」は、「いつか解決する」といった社会発展段階の先送り問題ではなくて、人口ボーナス期でロケット成長しなければならない今まさに、あってはならない問題が発生してきてしまっていることで、中国の後追いモデルでは成長できないかもしれないと、黄色信号がビカビカと点灯してしまっていることなのです。後々にリカバリーできない「オワコン状態」になってしまう可能性があるということです。

