2026年3月20日(金)

Wedge REPORT

2026年3月20日

 ただし、ILOとPLFSで数値は異なるものの、モディ政権発足後2020年まで増加傾向にあった若年失業率が、2020年のコロナ禍を境に近年は徐々に低下傾向にあることは両データセットに共通しています。その意味では政権2期目(2019年からの5年間)のモディ政権期間中に、若年失業率を低下させたと政権側がアピールすることはウソにはならないでしょう。しかし、インドの労働力構造に関する怪しい影が忍び寄ります。それは……。

産業界と高学歴な若者の深刻なミスマッチ

 失業と並んで問題となるのが、若年層の労働市場への参加率の低さです。PLFSの公式データもILOの推計データもともに直近数年の若年失業率は改善傾向を示していますが、その要因としてモディ政権が主張するように政策効果で雇用が増えたという解釈もある一方で、その背景には労働力率の低下(特に若年女性が求職自体を断念したこと)も影響している可能性があります。ILO報告書でも、「若年労働力人口に減少傾向が見られ、失業率改善にはその寄与も考えられる」とありました。

 一般的に若年層の高等教育への進学率が上昇するほど、一時的に労働市場から退出する人も増えます。失業率が下がったからといって、多くの人が職に就いたとは限らない点には注意しなければなりません。

 CMIEは2024年末のレポートで大学新卒者の失業率(学歴ある失業者)が38%にもなっていると報告していまして、日本で言えば「高学歴ワーキングプア」が発生しているという警鐘です。産業界の要求と高学歴な若者の希望のミスマッチが生じ始めているということになるでしょう。

 またインドスキルレポート(※全インド技術教育評議会、インド商工会議所連合会やブリティッシュカウンシルなどが作成)2024年版には雇用可能な(企業側が求めるスキルのある)新卒者は全体の51・25%に過ぎないとされていました。約半数の新卒者が「弊社には不要です」と見なされたということです。実は2014年には同データが34%以下だったので、大幅に上昇改善してきていると言えば確かに上昇してきているのですが、インドの大学がやけにポンコツ人材を輩出してしまっている、ないしは何らかの原因で相当の就業ミスマッチが発生してしまっていることが窺える数字です。

 インドの教育機関、教育制度の問題によるスキルのミスマッチはインドに進出する日本企業にとっても大きな課題となります。これまでインド進出の主流であったグローバル大企業であればインド工科大学(IIT)やインド管理大学(IIM)などの「上澄み」を確保していけば、そうしたさまざまなリスクは抑えることができますが、事業資源が少なく限られる日本のインド進出中小零細企業が適正な報酬で適正なスキルの若年層を見つけるのは相当に困難になってくるでしょう。

 「えいや!」と採用したインド人社員に対して、企業は新人研修やオンボーディングプログラム(新入社員支援制度)に多額の投資を余儀なくされるのは必至ですから、中小企業にとっては大きな負担となります。これもインド進出コストとして多めに見積もっておかなければなりません。


新着記事

»もっと見る