マザースやジャスダックの場合は、反社会勢力のマネーが暗躍することで、イメージを悪化させたという残念な歴史があるが、これも取引所の責任とは言えない。そもそも、リスク選好マネーが少なすぎることに要因があったのだ。
ということは、比較的低リスクの安定経営の企業においては、上場維持を続けることが買収リスクとなり、株式市場からの退出を選んでしまう一方で、ハイリスクの資金を必要とするベンチャー育成も思うように行っていないことになる。つまり、資金調達の機能としての証券取引所の意義が揺らいでいると言わざるを得ない。
外国人投資家にとって「買い」の日本株
3点目は、当面の危険の問題だ。外国人投資家の間で日本株は人気がある。例えばウォーレン・バフェット氏は、日本の総合商社が実は「産業別の評価ノウハウを持った人材がマネージする全世界対応のファンド」だということを見抜いて、割安感から大規模な投資を行った。また、年金資産など巨額の運用をする米国の機関投資家なども、日本株をポートフォリオに入れる例は多い。
理由としては、ポートフォリオを多様化してリスクを分散する中で、ハイ・ボラティリティ(価格変動率の高い)な投資として、日本株を組み入れるのである。どうしてかというと、ドル圏から見た日本株というのは、株価だけでなく、ドル円の為替レート変動が掛け算されることで、変動率が激しく上下に拡大するからだ。
このような観点での投資が多い中で、多くの海外投資家は「円安イコール買いのチャンス」という見方で、ポジションを増やしてきた。今のところ、下がり過ぎたので売るという動きはなく、下がればさらに買って買値の平均を下げにかかっている。そうした行動の裏にあるのは、いつの日か、「日本経済最後の輝き」として「一瞬の円高」が起きたら、そこで利益を確定しようという方針だ。
恐らく自動取引の設定にも、こうした将来のストーリーは既に埋め込まれているであろう。問題は、それが意外と早く来る可能性だ。
全くの個人の感触だが、現在は高市氏の積極経済イメージで、円安がゆるやかに継続している。けれども、米国のトランプ政権は基本的に「円高ドル安」を希望しており、ベッセント財務長官などは円安傾向に対する警告を始めている。
そんな中で、円がトランプ政権の許容範囲を超えて安くなった場合に、大統領自身の口先介入を招くかもしれない。その場合に、国際為替における投機マネーが動くと一瞬のうちに大幅な円高が起きてしまい、これが大規模な「日本株売り」を触発するかもしれないのである。
細心の注意を払うべきこと
もちろん、冒頭に申し上げたように、仮に円高による株安でも、ドルベースで安定していたら大きな問題はない。けれども、そこでパニック売りが発生して、ドル円の為替レート変動の範囲を超えた範囲にまで踏み込むような日本株の叩き売りになっては大変である。
さらに日本株の独歩安の果てに、為替がより悪質な円安へと反転するようなら日本経済には赤信号が灯る。そのような事態が起きないように、高市早苗首相には細心の注意を払い、警戒を怠らないようにしていただきたい。
いずれにしても、高市政権同様に「高市トレード」も始まったばかりである。課題山積の中ではあるが、このトレンドを維持して、今回の株高を日本経済全体の成長、そのための生産性向上に活かして行かねばならない。その結果として、成長による国民生活の改善を何としても実現する、これこそが喫緊の課題であると考える。
