北朝鮮が昨年11月に約1万2000人規模の兵力をロシアへ派兵して以降、現地からさまざまな情報が伝えられている。一方で、北朝鮮とロシアは派兵を匂わせる声明は出したものの、いまだ公式には認めていない。

ロシアへの派兵を進めている北朝鮮の金正恩総書記の狙いとは(代表撮影/ロイター/アフロ)
北朝鮮の派兵をめぐっては、主にウクライナと韓国から、北朝鮮兵を「肉の壁」「弾除け」など捨て駒や犬死にと揶揄する意見が出されているが、実のところ、朝鮮人民軍はロシア軍よりも新型の兵器を与えられ、勇敢さと高い練度によってウクライナ軍に苦戦を強いている。
本稿では、朝鮮人民軍の戦いぶりと北朝鮮国内での反応を紹介しながら、追加派兵の見通しを分析していきたい。
死傷兵士は多数だが
まずは、ロシア・クルスク州でウクライナ軍と戦っている朝鮮人民軍の現況を確認しておきたい。韓国の国家情報院は1月13日、朝鮮人民軍の損耗について、戦死者約300人、負傷者約2700人と国会に報告した。この数字が事実であれば、北朝鮮はわずか3カ月の間に兵力の4分の1を失ったことになる。
陸上戦闘では、兵力の3分の1を損耗した時点で組織的戦闘力を失う、いわゆる全滅や壊滅となるので、北朝鮮が相当な痛手を被ったことがわかる。だが、北朝鮮は4〜5個旅団を派兵したといわれているが、作戦単位は中隊や小隊だ。小規模な部隊がロシア軍の一部として活動しているので、損耗率25%という数字だけを取り上げて、朝鮮人民軍が組織的戦闘力を失いつつあるとは言い切れない。
そして、これまで特殊作戦軍に所属する陸軍の軽歩兵部隊が派兵されたと考えられていたが、韓国への浸透や偵察を任務とする偵察総局の部隊が投入されていることもわかった。