自転車旅の悩みはキャンプサイトの選定「どこにテントを張るのか」
自転車にテントを積んで旅行する旅ではどこの国でもキャンプサイトの選定に神経を使う。まず深夜でも治安が問題なさそうな場所が絶対条件である。人里離れた場所では深夜に襲われれば対抗手段がない。また大きな公園や自然公園は原則キャンプ禁止である。ビーチもキャンプ禁止の看板が多い。
そもそもどこの国でも正体不明の薄汚れた格好の人間がキャンプ場でない場所にテントを張っていれば市民が「不審者が野宿している」と警察に通報するのが普通である。トルコの場合は移民難民が多いので殊更に市民も警察も警戒している。
そんなことから筆者は遅くとも日没の1時間前には、キャンプサイトを探し始め日没と同時にテント設営するようにしていた。トルコでも前半の1カ月半くらいは、周囲に住宅があり夜中でも助けを呼べば住民が警察に通報してくれるような場所を探していた。ちなみに筆者は放浪中には首からサッカーの審判が使うホイッスルを下げている。
結果的には旅の前半では児童公園が多かった。早めにテントを設営して周辺住民が不信感を抱かないように積極的に挨拶して「日本から来た」「自転車でトルコを周遊している」と説明していた。
トルコ滞在中の80日間の宿泊場所で最も多いのはモスク
現地で80泊したがそのうちホステル・ホテルは7泊だけ。有料キャンプ村が3泊。長距離バスの車中泊が2泊。残り68泊はテント泊だ。テント泊の内訳は。
■モスク:28泊(内5泊はモスクの建物内の礼拝室を提供して頂いたのでテント泊ではないが)
■児童公園・広場・空き地:24泊
■ビーチ:9泊(公共ビーチでは他にキャンパーが沢山いるので安心できる)
■その他:7泊(2泊は警官の仮眠所と警察署構内。安全な野営地を探していたら警官が“警察署は一番安全だ”と泊めてくれたのである。他にカフェの庭に2泊など)
異教徒も暖かく迎え入れるモスクは安心安全の休息スペース?
トルコはイスラム教大国である。総人口8700万人の内イスラム教徒が99%である。それゆえどんな田舎でも集落のあるところ必ずモスク(イスラム教寺院。トルコ語ではジャーミーという)がある。
フェティエ中心部の大きなモスクの庭の隅にテントを張って早朝に撤収作業していた時、10人くらいのホームレスがモスクの礼拝堂の内外で寝ていることに気づいた。ホームレスは移民・難民らしく昼間は仕事に出かけて、日没後にモスクに来るようだ。どうもモスクは困っている人には門戸を開いているらしいと思われた。
翌々日オリュディ二ス・ビーチで野営地を探したが、ビーチはキャンプ禁止であり適当なキャンプサイトがなかった。ビーチに近い閑静な場所にモスクがあり、夕方の礼拝が終わったらしく信者がモスクから出てきた。モスクの責任者であるイマム(導師とも訳されるイスラム教の指導者でモスク運営の責任者)を探してモスクの庭でキャンプしたい旨を片言のトルコ語で伝えると即座に「タマーム(オーケー)」と快諾。ニコニコと微笑みながら「アラーは全ての人間にご慈悲を賜る。モスクはいかなる異邦人・異教徒にも開かれている」というような趣旨の説明をしてくれた。
それ以来夕刻になるとモスクを探してイマムの許可を得て宿泊するようになった。たいていは筆者の話が終わらぬうちに「タマーム」と快諾してくれた。モスクの庭やパティオにテント設営することが多かったが、モスクの本堂とは別に礼拝室があるモスクでは礼拝室での宿泊を勧められることもあった。イマムは概して明るく気さくな御仁が多かった。年齢はまちまちで30代前半から60代まで幅広い。
モスクは礼拝だけではない、余り知られていないモスクの“ありがたみ”
筆者が宿泊地としてモスクを優先したのは、安全安心以外に水場がありトイレがあることだ。モスクでは礼拝の前に手足を洗う場所とトイレが必ず設置されている。児童公園やビーチには水飲み場もトイレもない。
モスクの近隣の貧しい住民はポリタンクを持ってモスクに水を汲みに来る。トイレも借りに来る。彼らの住まいには水道もトイレもないのだ。
また幹線道路に近いモスクにはトイレを借りに来るドライバーも多い。観光名所にあるモスクでは余りにも観光客のトイレ利用が多いので有料にしているモスクが多い。
